刑事裁判の流れ(身柄事件・公判請求の場合)
刑事手続において,被疑者の身柄を逮捕・勾留によって確保する場合を「身柄事件」と呼んでいます。身柄事件において起訴・公判請求されると,身柄が拘束されたまま,刑事裁判が開始されることになります。
このページの以下では,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所が,身柄事件(公判請求)の場合の刑事裁判の流れについてご説明いたします。
刑事裁判の流れ(身柄事件・公判請求の場合)
(著者:弁護士 志賀 貴 )
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逮捕
身柄事件の場合,任意の事情聴取や内偵捜査の後に,捜査機関(主に警察)によって,裁判官による逮捕状に基づき被疑者の「逮捕」が行われます。
警察によって逮捕されると,被疑者の身柄は警察署内の留置場に拘束されます。
逮捕中は,主として警察官による取調べが行われます。取調べで話したことは調書化され,場合によっては裁判で証拠として利用されることもあります。
やっていないことまで調書にとられないように注意する必要があります。
警察官による逮捕の場合,警察官は48時間以内に検察官に被疑者の身柄を送致するか,そうでなければ釈放しなければなりません。
被疑者の身柄送致を受けた検察官は,24時間以内に勾留請求をするか,釈放する必要があります。
検察官による逮捕または警察官による逮捕後直ちに検察官が身柄を引き受けた場合は,検察官は48時間以内に勾留請求をするか,釈放する必要があります。

勾留
検察官によって勾留請求がなされ,裁判所による勾留状が発付されると,被疑者の身柄は「勾留」され,身柄の拘束が継続されることになります。
勾留の場合,被疑者の身柄は,拘置所に移されるのが原則です。ただし,警察署の留置場に留め置かれることもあります。
勾留中は,検察官によって取調べが行われます。この場合も,取り調べで話したことは調書化されます。検察官調書は,裁判でも証拠として採用されやすいので,気を付けなければなりません。
勾留の期間は10日間が限度です。もっとも,勾留延長請求によってさらに10日間を限度として延長できるとされています。つまり,合計で,最大20日間勾留されることがあります。
検察官は,この勾留期間中に公訴提起をする必要があります。公訴提起しない場合には,釈放する必要があります。公訴提起をしない場合,不起訴処分により釈放という形になるのが通常です。

公訴提起(起訴)
検察官が不起訴ではなく,裁判をする必要があると考えた場合には「公訴提起(起訴)」されることになります。
具体的には,裁判所に対して起訴状が提出されます。略式などではない通常訴訟を求める場合を「公判請求」と呼んでいます。
公訴提起がされると,被疑者の勾留は,被疑者勾留から被告人勾留に切り替えられることになります。
被疑者勾留の場合には身柄拘束の主体は捜査機関ですが,被告人勾留の場合の主体は裁判所です。したがって,身柄は必ず拘置所に移されなければなりません。
この被告人勾留は,無罪判決の場合を除いて,裁判が終了するまで継続されるのが通常です。

起訴状の送達・召喚
公訴提起がされると,裁判所から,被告人宛てに「起訴状」が送達されることになります。併せて,公判期日(または公判前整理手続期日)への出頭の召喚状も送られてきます。

公判前整理手続
裁判員裁判対象事件や事案が複雑で事前準備が必要であるという事件の場合には,実際の公判前に,その準備のための「公判前整理手続」が行われます。公判前整理手続には,被告人も出席することができます。

公判期日への出頭
裁判所によって事前に指定された公判期日に,被告人も出頭することになります。身柄事件の場合には,拘置所から警察車両によって護送されます。法廷では,手錠は外されるのが通常です。

冒頭手続:人定質問
公判が開廷されると「冒頭手続」が開始されます。冒頭手続では,まず最初に,裁判官から被告人に対して「人定質問」が行われます(刑事訴訟法196条)。
人定質問とは,起訴状朗読に先立って,被告人が人違いでないかどうかを確かめるために,裁判官から被告人に対してなされる質問のことをいいます。具体的には,氏名,本籍,住所,生年月日等が問われます。

冒頭手続:起訴状朗読
人定質問によって人違いでないことが確かめられると,次に,検察官によって「起訴状朗読」がされます。

冒頭手続:黙秘権等の告知
検察官による起訴状朗読後,裁判官から被告人に対して,「黙秘権等重要な権利の告知」がなされます。つまり,言いたくないことは言わなくても不利益に取扱わないという旨が告知されるということです。

冒頭手続:罪状認否
裁判官による黙秘権等の告知後,裁判官から被告人に対して,検察官によって朗読された起訴状の事実に間違いがないかどうかを質問されます。これを「罪状認否」と呼んでいます。
内容に間違いがなければ,間違いない旨を回答します。間違いがあれば,どこが事実と違うということを述べる必要があります。
被告人による罪状認否後,弁護人に対しても意見が求められます。事実に争いまたは法的な問題点があれば,ここで弁護人が争点を明らかにすることになります。

証拠調べ:検察官の冒頭陳述
冒頭手続が終了すると「証拠調べ手続」が開始されることになります。証拠調べ手続では,まず初めに,検察官が「冒頭陳述」を行います。
冒頭陳述では,被告人の身上・経歴,犯行に至る経緯,犯行の状況,情状面などについての検察官の主張の概要または意見が述べられることになります。

証拠調べ:弁護人の冒頭陳述
簡易な事件などではあまりされませんが,重大事件や裁判員裁判などでは,検察官だけでなく,弁護人による冒頭陳述がされることもあります。
弁護人の冒頭陳述でも,やはり被告人の身上・経歴,犯行に至る経緯,犯行の状況や情状面などについての被告人・弁護人の主張の概要または意見が述べられます。

証拠調べ:検察官による証拠調べ請求
冒頭陳述後,検察官から提出する証拠を取り調べるよう,裁判所に対して「証拠調べ請求」がなされます。具体的には,提出する証拠の一覧や立証趣旨等を記載した証拠関係カードが提出されることになります。
検察官提出証拠について,裁判官から弁護人に対して,同意または不同意の意見を求められます。同意したものは証拠として採用されます。不同意のものは,裁判官が証拠として採用するかどうかを判断することになります。

証拠調べ:弁護人による証拠調べ請求
検察官による証拠調べ請求の後に,弁護人から証拠調べ請求が行われます。具体的には,提出する証拠の一覧や立証趣旨等を記載した証拠関係カードが提出されることになります。
弁護人提出証拠について,裁判官から検察官に対して,同意または不同意の意見を求められます。同意したものは証拠として採用されます。
不同意のものは,裁判官が証拠として採用するかどうかを判断することになります。

証拠調べ:物証・書証の取調べ
裁判所が証拠として採用するとしたものについて「証拠調べ」が行われます。
物証であれば「展示」により,書証であれば「朗読」により,それぞれ証拠調べが行われます。書証については要旨が告知されるだけの場合もあります。

証拠調べ:証人尋問
証拠のうち「人証」については「尋問」の方法によって証拠調べが行われます。いわゆる「証人尋問」です。
検察側証人尋問では,まず検察官が主尋問を行い,次に弁護人が反対尋問を行います。その後,裁判官によって職権尋問が行われることもあります。
弁護側証人尋問では,まず弁護人が主尋問を行い,次に検察官が反対尋問を行います。その後,裁判官によって職権尋問が行われることもあります。

証拠調べ:被告人質問
証人尋問の後(証人尋問が無い場合には,物証・書証取調べの後)に,被告人本人に対する「被告人質問」が行われるのが通常です。
被告人質問では,まず弁護人によって主質問が行われ,次に検察官による反対質問が行われます。その後,裁判官によって職権質問が行われることもあります。

弁論手続:検察官の論告・求刑
証拠調べ手続が終了すると,弁論手続が開始されます。弁論手続においては,まず検察官から「論告・求刑」が行われます。
論告とは,検察官による,犯罪事実・法令適用に関する意見の陳述のことです。論告に続いて求刑が行われます。求刑とは,文字どおり,裁判所に対して検察官が相当と考える刑罰の適用を求めることをいいます。

弁論手続:弁護人の最終弁論
検察官による論告・求刑の後,今度は弁護人から「最終弁論」を行うことになります。最終弁論とは,犯罪事実・法令の適用に関する弁護人の意見の陳述です。

弁論手続:被告人の最終陳述
弁護人の最終弁論が終わると,弁論手続の最後に,裁判官から被告人に対して,最終の陳述をするように求められます。

判決の言渡し
弁論手続が終了すると,公判は終結され結審となります。結審後,一定期間後に,裁判官から判決が言い渡されることになります。判決言渡しは,検察官・被告人・弁護人が出頭する公開法廷において行われることになります。

判決の確定または不服申立て
被告人は,判決の内容に不服がある場合には,その判決言渡しの日の翌日から14日以内に不服申立て手続をとらなければなりません。
第一審が簡易裁判所であれば地方裁判所に控訴をし,その控訴審判決に不服があれば,高等裁判所に上告します。
第一審が地方裁判所であれば,高等裁判所に控訴をし,その控訴審判決に不服があれば,最高裁判所に上告します。
上記期間内に不服申し立てをしなかった場合には,その判決は確定することになります。判決が有罪判決であれば,判決確定後,刑の執行を受けることになります。

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