不法行為責任とは?
交通事故の加害者等が負う基本的な民事責任とは,民法上の不法行為責任です。ここでは,この不法行為責任とは何かについてご説明いたします。
(著者:弁護士 志賀 貴 )
なお,弁護士によるご相談については,交通事故損害賠償請求の法律相談・ご依頼のページをご覧ください。
不法行為責任とは
交通事故が起こった場合,その加害者は,さまざまな法的責任を課せられることになります。その1つが民事責任です。もっと具体的にいえば,交通事故の加害者は,不法行為責任を負担するということです。
この不法行為責任については,民法で定められています。
【民法709条】
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
われわれの社会生活は,共同生活です。共同生活においては,ある行為が他人に利益を与えることもありますが,他方,ある行為が他人に損害を与えるということもあり得ます。
これは,共同生活を営んでいる以上避けられないことですが,しかし,この損害を放置しておいては,かえって共同生活が成り立たなくなってしまいます。そこで,それを調整する制度が必要となってきます。
その共同生活において不可避的に生ずる損害を当事者間において公平に分担しようという制度が,この「不法行為責任」という制度です。
つまり,我が国における不法行為制度の趣旨は,加害者に罰を与えるという制度(これを「懲罰的不法行為」と呼ぶことがあります。)ではなく,損害の公平な分担を図ろうというところにあるのです。
不法行為責任の効果
不法行為責任が成立した場合,どのような効果が生ずるのかといえば,それは損害賠償責任が生ずるということになります。
不法行為をした者は,その不法行為の被害者に対して,損害賠償を支払うという責任を負うことになるのです。
この損害賠償は,金銭である必要があります(金銭賠償の原則。民法722条・417条)。つまり,我が国の制度では,不法行為が生じた場合,金銭によって調整することになるということです。
したがって,交通事故の損害賠償請求の場合においても,被害者等に生じた損害は,金銭賠償によって調整されるということになります。
不法行為責任の要件
不法行為責任が成立するためには,以下の要件が必要となってきます。
- 他人の権利または法律上保護される利益を侵害する行為をしたこと(権利等侵害行為)
- その権利等侵害行為が故意または過失に基づくこと(故意・過失)
- 損害が生じたこと(損害の発生)
- 損害の発生が権利等侵害行為によるものであること(因果関係)
権利等侵害行為
不法行為責任が成立するためには,まず他人の権利または法律上保護される利益を侵害する行為がなければなりません。
以前は権利侵害行為のみが規定されていましたが,民法改正において,権利とはいえないまでも法律上保護される利益を侵害する場合でも,不法行為が成立することが明示されるようになりました。
交通事故の場合でいえば,まさに他人の生命・身体または財産を害する事故を起こしたということが,この権利等侵害行為に当たるということになります。
故意・過失
不法行為責任が成立するためには,上記の権利等侵害行為が,その行為者の故意または過失によるものでなければなりません。つまり,無過失である場合には,不法行為責任は成立しないということです。
交通事故の場合は,過失があるかがどうかが問題となることもあります。また,運行供用者責任の場合には,運行供用者の過失は求められていません(ただし,免責事由があるかどうかは問題となります。)。
損害の発生
不法行為責任が成立するためには,損害が発生している必要があります。まれに誤解があるのですが,何らの損害も発生していないのに,責任だけを追求するということはできないということです。
この損害は財産的損害に限られません。精神的な苦痛も損害として認められる場合があります。
交通事故の場合も,この損害に当たるものは何か,損害の金銭的な評価をどのように考えるかが最大の問題点となります。そのため,「損害論」として独立の分野として扱われることもあります。
因果関係
不法行為が成立するためには,権利等侵害行為と発生した損害との間に因果関係が認められることも必要となってきます。
もっとも,単に権利等侵害行為がなければ損害は発生しなかったといえればよいというわけではなく,社会通念上,その権利侵害行為からその損害が発生したと一般的にいえるという場合にだけ,ここでいう因果関係が認められることになります。
これを相当因果関係といいますが,交通事故の場合でも,特に後遺障害の場合など,この相当因果関係があるのかどうかということは大きな問題となることが少なくありません。
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