交通事故損害賠償請求の紛争解決手続にはどのようなものがあるか?
交通事故の損害賠償請求の紛争を解決するための手続には,いくつかのものがあります。ここでは,交通事故損害賠償の紛争解決のための手続についてご説明いたします。
交通事故損害賠償請求の紛争解決手続にはどのようなものがあるか?
(著者:弁護士 志賀 貴 )
なお,弁護士によるご相談については,交通事故損害賠償請求の法律相談・ご依頼のページをご覧ください。
示談交渉
交通事故による損害賠償を請求する方法として,もっとも基本的な方法は,いわゆる「示談交渉」でしょう。要するに,当事者間での話し合いということです。
当事者間での示談交渉
当事者間で話し合いがつくのであれば,正直,それに越したことはないでしょう。最も穏便な解決方法といえます。また,話し合いですので,柔軟で迅速な解決も可能というメリットがあります。
もっとも,当事者間による話し合いですと,お互い感情的になりやすく,話がまとまらないということも少なくありません。その点が,最大のデメリットといえるでしょう。
示談代行サービス
任意保険会社においては,示談代行サービスという商品があります。対人賠償や対物賠償保険では,この示談代行サービスが付けられていることが少なくないと思われます。
相手方が任意保険の示談代行サービスを付けていれば,その任意保険会社の交渉担当者と交渉するということになります。
この場合も,やはりメリットは解決が早いということに尽きるでしょう。相手方が任意保険に加入している場合,示談交渉であれば,他の手続に比べて,かなり早く損害賠償金が支払われることになります。
ただし,任意保険では,事故の態様などによってほぼ確定した支払いの内部基準が定められています。この社内基準を超えることは,基本的にどんなに交渉を重ねても難しいようです。
>> 示談代行サービスとは?
代理人弁護士のとの交渉
また,示談交渉においては,場合によっては,弁護士が代理人として選任されることがあります。
加害者自身が選任する場合もありますし,保険会社が選任するという場合もあり得ます。特に法的に難解な争点がある場合や紛争が大きくなるおそれのある場合などは,弁護士が選任されることが多いようです。
示談交渉のメリット・デメリット
示談交渉のメリットは,上記のとおり,解決が迅速であるという点です。ただし,金額については妥協をする必要があるでしょう。
また,保険会社担当者や弁護士はプロですので,ご自身で交渉をするためには,それなりの知識を得ておく必要があるでしょう。
裁判外の紛争解決機関(ADR)
当事者間における示談交渉では話がまとまらないという場合,裁判外紛争処理機関(ADR)を利用するという方法があります。
ADRとは
ADRとは,裁判外紛争処理機関のことをいいます。つまり,裁判にはしないけれども,当事者間だけではなく,一定の仲裁者を間に入れて交渉をし,紛争を解決する機関のことです。
交通事故問題に関しては,さまざまなADRが用意されています。例えば,公益財団法人交通事故紛争処理センターや公益財団法人日弁連交通事故相談センターなどがもっとも一般的でしょう。
また,その他にも,日本損害保険協会のそんぽADRや外国損害保険協会の保険オンブズマンなどのADRもあります。
どのADRを選ぶべきか
交通事故紛争処理センター(通称「紛セン」)は,多くの損害保険会社や共済と協定を結んでおり,ここでの審査結果はその協定を結んでいる損害保険会社を拘束するとされています。
したがって,相手方が任意保険会社に加入しているというのであれば,この紛センを選ぶべきでしょう。
日弁連交通事故相談センターの場合,保険会社との協定はありませんが,共済については大手も含めて多くの共済と協定が結ばれており,それらの共済に対する拘束力があります。
また,紛センよりも解決までの時間が短い場合が多いので,相手方が共済加入である場合や早期解決を希望する場合であれば,この日弁連交通事故センターも選択肢に入るでしょう。
ADRのメリット・デメリット
ADRは,示談交渉と異なり,仲裁者を入れて話し合いをするため,客観的な話し合いができるというメリットがあります。
また,話し合いがつかなかった場合,ADRにおいて一定の決定がなされ,その判断は上記のとおり保険会社や共済を拘束しますので,実効性もあります。
もっとも,金額的な面でいうと,訴訟の場合に比べれば低額になることがあるでしょう。また,協定を結んでいない相手方の場合には拘束力を生じないので,その場合には実効性を欠くという場合があり得ます。
裁判手続
裁判所を利用する方法といっても,調停や訴訟などがあり,また,訴訟にも少額訴訟や通常訴訟などがあります。
調停
調停とは,裁判所が間に入って当事者間の話し合いを調整するという制度です。当事者間の話し合いが基本ですから,ADRに近い性質を持っています。
ただし,裁判外のADRと違い,一度話がついて調停調書が作成されると,後でその内容を覆すことができなくなるという強制力は持っています。
訴訟
調停など話し合いを基調とした交渉が上手くいかない場合には,訴訟を起こす必要があります。むしろ,裁判手続を選択するのであれば,この訴訟を提起するのが一般的でしょう。
訴訟においては,当事者が相互に主張・立証を尽くし,最終的にその主張・立証に基づいて判決が下されます。当然,判決には強制力があります。
もっとも,訴訟は紛争を終局的に解決できるという大きなメリットがありますが,時間や費用がかかる,専門的知識が必要となるというデメリットもあります。
ただし,金額的には,いわゆる裁判基準が用いられるので,示談交渉やADRよりも高額となるのが通常です。
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