交通事故における休業損害とは?
交通事故によって傷害を負った場合,傷害の程度によっては,仕事をすることができなくなるということもあります。
その場合,傷害によって休業したために得ることができなくなった収入を「休業損害」として賠償請求できることがあります。
ここでは,この休業損害とは何かについてご説明いたします。
交通事故における休業損害とは?
(著者:弁護士 志賀 貴 )
なお,弁護士によるご相談については,交通事故損害賠償請求の法律相談・ご依頼のページをご覧ください。
休業損害とは
交通事故に遭った場合に賠償を請求できる損害として,「消極損害」があります。これは,交通事故に遭わなければ得ることができていたであろう収入等(広義の逸失利益)を損害とするというものです。
この消極損害の1つとして,「休業損害」というものがあります。
休業損害とは,交通事故によって傷害を負ったために休業を余儀なくされた場合に,交通事故による休業がなかったならば得ることができたはずの収入・利益を損害として賠償請求できるというものです。
傷害事故の場合
後遺障害のない傷害事故の場合には,交通事故による受傷から傷害が治癒して仕事に復帰できるまでの間の休業について,休業損害を請求することになります。
後遺障害事故の場合
後遺障害が残ってしまった傷害事故の場合には,交通事故による受傷から症状固定時までの間の休業について,休業損害を請求できます。
症状固定後については,休業損害は認められませんが,逸失利益の損害賠償請求が認められる場合があります。
死亡事故の場合
死亡事故の場合には,交通事故による受傷から死亡時までの間の休業について,休業損害を請求できます。
死亡時以降については,後遺障害の場合と同様に逸失利益を損害賠償請求することになります。したがって,即死であった場合には,逸失利益のみが問題となり,休業損害は問題とならないということになります。
自賠責保険基準による休業損害の算定
自賠責保険の基準においては,休業損害は,実休日日数1日当たり5700円が原則となります。
- 休業損害 = 5700円 × 休業日数
もっとも,例外的に,1日の収入額が5700円を超えると認められた場合には,その実額を1日当たりの金額として算定することができます(ただし,1万9000円が限度)。
裁判基準による休業損害の算定
裁判での基準としては,休業損害は,1日当たりの基礎収入に休業日数を乗じて計算します。
- 休業損害 = 1日当たりの基礎収入 × 休業日数
休業損害の算定方法自体は,上記のとおり単純です。しかし,基礎収入をどのように考えるべきか,休業日数をどのように考えるべきかという個々の問題については,争いとなることが少なくありません。
基礎収入の問題
前記のとおり,休業損害においては,基礎収入をいくらにすべきかということは大きな問題となることがあります。
例えば,賃金額が一定で変動の小さいサラリーマンや公務員などについては,それほど算定が困難となるわけではありません。基礎収入の算定について争いになることは少ないでしょう。
ただし,昇給・賞与・退職金などをどのように取り扱うべきかには争いとなることもあります。
しかし,個人事業者など収入額が一定ではない場合には,収入が大きい時もあれば小さい時もあるため,どの時期の収入を基準として基礎収入を算定すべきかについて問題となってきます。
また,会社役員なども,報酬のうち定額部分についてはそれほど問題とはならないでしょうが,そうでない利益に応じて支払われる報酬部分などについては争いとなることがあります。
現実の収入がない場合には,原則として休業損害は認められませんが,専業主婦などの家事従事者やアルバイトをしている学生などについては,休業損害が認められる場合があります。
休業日数の問題
休業損害においては,基礎収入の算定だけでなく,休業日数についても問題となることがあります。
入院している期間については,さほど問題なく休業日数としてカウントしてよいでしょう。入院している以上,通常どおり就業することができないのは明らかだからです。
ただし,例外的に,過剰な入院などの場合には,問題となる場合があるかもしれません。
休業日数で問題となるのは,やはり退院後・通院中の期間でしょう。はたしてこの期間中,本当に就業することができなかったのかという点が問題となってくるのです。
仮に,実際にはその期間中就業することが可能な状態であったということであれば,その就業可能となった時以降の日数は休業日数に含めることができないということになります。
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