労働契約に関するよくあるご質問・Q&A
企業の人事・労務のトラブルを未然に防止するためには,従業員・労働者を雇用する際に,適切な労働契約を締結しておくことが重要となってきます。
ここでは,労働契約に関するよくあるご質問について,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所がQ&A形式でお答えいたします。
労働契約に関するよくあるご質問・Q&A
(著者:弁護士 志賀 貴 )
なお,人事労務問題(使用者側)法律相談について詳しくは,弁護士による人事労務問題(使用者側)の法律相談のご案内をご覧ください。
労働契約とは?
- Q. 労働契約とはどのような契約ですか?
- A.労働契約とは,労働者が使用者に使用されて労働し,使用者がこれに対して賃金を支払うことについて,労働者及び使用者が合意することによって成立する契約のことをいいます(労働契約法6条)。
- Q. 労働契約における「使用者」とは誰を意味しますか?
- A.労働契約における「使用者」とは,「その使用する労働者に対して賃金を支払う者」のことをいいます(労働契約法2条2項)。要するに,雇う側ということです。
- Q. 労働契約における「労働者」とは誰を意味しますか?
- A.労働契約における「労働者」とは,「使用者に使用されて労働し,賃金を支払われる者」のことをいいます(労働契約法2条1項)。要するに,雇われる側・従業員ということです。
- Q. 労働契約は雇用契約と何が違うのでしょうか?
- A.雇用契約とは,「当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し,相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって,その効力を生ずる」契約です(民法623条)。労働契約は労働契約法に定められており,雇用契約は民法で定められていますし,それぞれの文言にも違いはあります。しかし,基本的には同質の類型の契約であり,実際上は,両者を区別したからといって大きな違いは生じないといってよいでしょう。ただし,労働契約は,雇用契約のうちでも労使間の従属関係が強いものを指すとするなど,両者には違いがあるとの見解も有力です。
- Q. 労働契約法が適用されない労働契約はありますか?
- A.労働契約法が適用されない労働契約には,例えば,以下のものがあります(労働契約法22条)。
- 国家公務員・地方公務員
- 使用者が同居の親族のみを使用する場合
労働契約の基本原則
- Q. 労働契約の基本原則とは何ですか?
- A.労働契約において守られるべき基本的な理念・原則としては,労使対等合意の原則・均等処遇(均等考慮)の原則・仕事と生活の調和への配慮の原則・信義誠実の原則(信義則)・権利濫用の禁止の5つがあります(労働契約法3条)。
- Q. 労働契約における労使対等合意の原則とは何ですか?
- A.労働契約における労使対等合意の原則とは,労働契約は労働者および使用者が対等の立場における合意に基づいて締結または変更しなければならないとする原則のことをいいます(労働契約法3条1項)。
- Q. 労働契約における均等処遇(均等考慮)の原則とは何ですか?
- A.労働契約における均等処遇(均等考慮)の原則とは,労働契約は労働者および使用者が,就業の実態に応じて,均衡を考慮しつつ締結・変更しなければならないとする原則のことをいいます(労働契約法3条2項)。
- Q. 労働契約における仕事と生活の調和への配慮の原則とは何ですか?
- A.労働契約における仕事と生活の調和への配慮の原則とは,労働契約は労働者および使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結・変更しなければならないとする原則のことをいいます(労働契約法3条3項)。
- Q. 労働契約における信義誠実の原則(信義則)とは何ですか?
- A.労働契約における信義誠実の原則(信義則)とは,労働者および使用者は,労働契約を遵守するとともに,信義に従い誠実に権利を行使し義務を履行しなければならないとする原則のことをいいます(労働契約法3条4項)。
- Q. 労働契約における権利濫用の禁止とは何ですか?
- A.労働契約における権利濫用の禁止とは,労働者および使用者は,労働契約に基づく権利の行使に当たっては,それを濫用することがあってはならないとする基本原則のことをいいます(労働契約法3条5項)。
労働契約における禁止事項
- Q. 労働契約において禁止されることとしては,どのようなものがありますか?
- A.労働契約であっても,どのような合意をしてもよいわけではありません。例えば,以下のような定めは許されます。
- 契約不履行についての違約金・損害賠償の予定
- 前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺する旨の定め
- 強制貯蓄・貯蓄管理の定め
- Q. 労働契約に,労働者が契約違反をした場合の違約金を定めることはできますか?
- A.いいえ。使用者は,労働者に労働契約の債務不履行があった場合に違約金を支払わなければならないとする旨の定めや,損害賠償の予定を定めることは許されないとされています(労働基準法16条)。
- Q. 労働者に対する貸金と給料を相殺できるという内容の労働契約を定めることはできますか?
- A.いいえ。使用者は,給料の前借り金や,労働をすることを条件とした前借り金を賃金と相殺することは許されません(労働基準法17条)。したがって,前借り金等を賃金と相殺できる旨の労働契約を定めることはできません。
- Q. 毎月,一定金額を給料から差し引いて,それを使用者側で労働者のために貯蓄しておくという内容の労働契約を定めることはできますか?
- A.いいえ。使用者は,給料の一部を強制的に貯蓄に充て,またはその貯蓄を使用者において管理するという労働契約をすることは許されません(労働契約法18条1項)。
- Q. 労働契約に期間を定めることはできますか?
- A.はい。労働契約についても期間の定めをすることはできます。
- Q. 労働契約の期間は何年でも可能なのでしょうか?
- A.労働契約においては,期間の定めをしないこともできます。ただし,期間を定める場合には,原則として,上限は3年とされています。ただし,一定の専門的知識等を有する労働者および満60歳以上の労働者との労働契約については,5年が上限となります(労働基準法14条1項)。
労働契約書の作成
- Q. 労働契約を締結する場合,契約書を作成しなければならないのでしょうか?
- A.必ずしも労働契約書を作成しなければならないとはされていません。ただし,使用者は,労働契約締結に際して労働時間その他の労働条件を明示しなければならず(労働基準法15条1項),その内でも特に重要な一定の事項については,労働者に対する書面の交付が必要とされています(労働基準法施行規則5条)。
- Q. 契約書等の書面を作成・交付しておかなければならない労働条件にはどのようなものがありますか?
- A.労働基準法施行規則5条によれば,以下の事項については書面の作成・労働者への交付が必要とされています。
- 労働契約の期間に関する事項
- 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
- 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
- 始業及び終業の時刻・所定労働時間を超える労働の有無・休憩時間・休日・休暇並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
- 賃金の決定・計算及び支払の方法・賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
- 退職手当の定めが適用される労働者の範囲・退職手当の決定・計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
- Q. 労働条件を明示した就業規則がある場合には,書面を作成・交付しなくてもよいのでしょうか?
- A.いいえ。労働契約書という名称でなくても,就業規則に規定があればそれをもって労働条件の書面とすることは可能ですが,労働者への交付は必要となります。
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