各種の法形式
法令には,そのうちには制定の主体や手続の違いなどによって,いくつかの種類があります。この法令の種類・分類のことを「法形式」ということがあります。
わが国の法形式は,憲法を頂点として,その下に法律,行政機関による命令,最高裁判所規則や議院規則,地方自治体にの条例があります。また,他国との取り決めである条約も法形式の1つです。
ここでは,各種の法形式について,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所がご説明していきます。
各種の法形式
(著者:弁護士 志賀 貴 )
なお,個人の方の生活や中小企業の方の事業に関わる各種法令の一覧については,生活・事業に関わる法令紹介ページをご覧ください。
各種の法形式・優劣
前記のとおり,制定主体や制定手続の違いなどによって,憲法・法律・命令・条例・地方公共団体の長の制定する規則・最高裁判所規則・議院規則・条例といった法形式があります。
この各法形式には優劣関係があります。一般的には,「憲法→条約→法律→命令・最高裁判所規則・議院規則→条例・地方公共団体の長の規則」という優劣関係があると解されています。
憲法
法形式間で頂点に立つものは,憲法です。わが国でいえば,「日本国憲法」がこれに当たります。その日本国憲法自身が明記するように「最高法規」です。
憲法には,最も重要な個人の基本的人権が保障されています。基本的人権を保障している憲法に反する法令は,どのようなものであっても,その効力を否定されることになります。
>> 日本国憲法とは?
法律
上記憲法の内容を具体化するものが,国民の代表機関である国会によって制定される「法律」という法形式です(つまり,憲法は「法律」ではありません。)。
法律は無数にありますが,例えば,「民法」,「刑法」などがこれに当たります。
法律とは何かというと,法学上は,一般的・抽象的法規範のことを法律というと解されています。全国民の民意に基づくという民主的基盤を有することから,憲法(及び条約)に次ぐ効力を有していると解されます。
命令
国会が制定した法律を現実に執行するのが行政の役割ということになりますが,その執行のためにさらに細かいルールが必要となってきます。それが,行政機関が制定する「命令」という法形式です。
この命令は,法律を執行するために制定されるものですから,法律の委任に基づくものである必要があります。つまり,法律に反するものであってはならないということです。
命令は,制定主体の行政機関によって名称が異なります。
内閣が制定するものを「政令」,内閣総理大臣により制定されるものを「(内閣)府令」,各省の大臣によって制定されるものを「省令」,各庁の長によって制定されるものを「庁令」,各庁の長や人事院などによって制定されるものを「規則」といいます。
条例・地方公共団体の長が制定する規則
条例は,地方公共団体の議会が制定する法形式です。この条例も,国の法令(法律・命令)に反することはできません。したがって,形式的には,これらに劣後するということになります。
もっとも,命令と異なり,住民が選挙で選んだ地方議員によって構成される地方議会が制定する法形式で民主的基盤を持っていることから,法律の委任の程度が緩和されると解されています。
また, 地方公共団体の長は,自ら規則を制定することができます。この規則も,条例と同様,国の法令に反することはできません。
地方公共団体の長の制定する規則と条例との関係については,規則も,条例と同様に,住民の選挙によって選ばれた地方公共団体の長が制定するものですから,基本的には同列と解されています。
ただし,条例の施行規則などを定めたものについては,条例が規則に優越すると考えられています。
最高裁判所規則・議院規則
最高裁判所は,司法のトップとして,独自に規則を制定することができます。この規則の制定は,司法権の独立に基づくものです。「最高裁判所規則」と呼ばれる法形式です。
最高裁判所規則としては,例えば,民事訴訟規則・民事調停規則・破産規則・労働審判規則・刑事訴訟規則などさまざまな規則があります。
ただし,最高裁判所規則と法律が競合した場合には,民主的基盤を有する法律が優越すると解されています。
また,国会の各議院もそれぞれ独自の「議院規則」を制定することができます。具体的に言えば,衆議院規則と参議院規則です。議院規則は,各議院の自律権に基づくものです。
国会そのものには規則制定権はありません。国会の規律はあくまで法律で定めるべき事柄だからです。国会そのものではなく,国会を構成する衆議院と参議院がそれぞれ議院規則の制定権を有しているです。
ただし,議院規則と法律が競合した場合も,法律が優越すると解されています。
もっとも,最高裁判所規則・議院規則のいずれの場合も,現実には法律と競合する事項はないといわれています。
条約
条約とは,国家間の取り決めです。この条約は,国際法的に効力を有するだけではなく,国内法的効力を有する場合があります。
国内法的に効力を有することになるという場合には,条約と憲法との優劣が問題となりますが,これについては憲法が優越すると解されています。
さらに,条約が国内法的効力を有する場合,憲法には劣後するとしても,法律との関係での優劣はどうなるのかが問題となります。これについては,条約が法律に優越すると解するのが通説的見解です。
したがって,条約は,それが国内法的効力を有する場合には,日本国憲法に次ぐ法形式としての効力を有しているということになります。
各種の法形式に関連する記事
各種の法形式についてさらに詳しく知りたい場合は,以下の記事もご覧ください。
- 生活・事業に関わる各種法令の解説一覧
- 日本国憲法とは?
- 国会による立法の意味
- 最高裁判所規則集(裁判所サイトから)
- 衆議院規則(衆議院サイトから)
- 参議院規則(参議院サイトから)
- 法律に関するブログ一覧(外部サイト)
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