担保物権の種類
ある債権(被担保債権)の履行を確実にしておくために,債務者等の財産に担保を設定しておく場合があります。この物に対して担保を有しているという権利のことを担保物権といいます。
担保物権については,民法において,留置権・抵当権・質権・先取特権が規定されていますが,その他にも,解釈上認められるものや,特別法において認められている担保物権もあります。
ここでは,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所が,この担保物権の種類についてご紹介いたします。
(著者:弁護士 志賀 貴 )
なお,民法とはどのような法律なのかについては,民法の解説ページをご覧ください。その他個人の方の生活や中小企業の方の事業に関わる法令については,生活・事業に関わる法令紹介ページをご覧ください。
民法上明文のある担保物権(典型担保)
民法上で明文によって定められている担保物権には,留置権・抵当権・質権・先取特権があります。この民法上明文規定のある担保物権のことを「典型担保」と呼ぶことがあります。
抵当権
担保物権のうちでも代表的なものは,やはり「抵当権」でしょう。
抵当権とは,債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について,他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受けることができる担保物権のことをいいます。
つまり,ある債権の支払いのために,債務者(または第三者)の不動産を債務者(または第三者)の下にとどめ置いておきながら,その物を担保にとるというものです。
そのため,担保目的物である不動産は,その所有者である債務者や第三者が利用を継続できます。
したがって,債権者は,不動産それ自体というよりも,その不動産の交換価値を把握してそれを担保とするということになります。
また,抵当権の対象となる物は,不動産に限られています。
さらに,この抵当権は,法律上当然に生ずるものではなく,抵当権者と抵当権設定者との抵当権を設定するという約定(抵当権設定契約)によって生ずることになります(約定担保物権)。
典型的なものは住宅ローンの場合です。住宅ローンとして銀行等から住宅資金を借りる場合,その購入する住宅不動産に抵当権が設定されるのが通常です。
質権
一般に「質に入れる」という言葉がありますが,これは法的にいえば,ある物に質権を設定するということです。
この質権とは,債務者又は第三者の物の占有を権利者に移転し,権利者はその物から優先的に弁済を受けることができるという担保物権です。
抵当権と異なり,担保目的物の占有は,権利者(質権者)に移転します。つまり,質権を設定するためには,目的物を質権者に引き渡すことが必要となります。
債務が弁済されると,この物は債務者または第三者に返還されます。
質権の対象となる物は,不動産に限られません。むしろ,動産質がメインでしょう。また,債権を目的物とすることもできます(債権質)。この質権も,抵当権と同様,約定担保物権です。
先取特権
先取特権とは,債務者の一定の財産について優先的に(他の債権者に先取りして)弁済を受けることができるという担保物権です。
この先取特権は,抵当権や質権と異なり,当事者間の約定によって生ずるものではなく,一定の要件を満たす限り,法律上当然に発生します(法定担保物権)。
先取特権には,債務者の総財産に対して担保権を行使できる「一般先取特権」と,特定の財産に対してだけ担保権を行使できる「特定先取特権」があります。
特定先取特権には,動産の先取特権,不動産賃貸借の先取特権,不動産先取特権があります。
留置権
留置権とは,他人の物を占有している者が,その物に関する債権の弁済がなされるまで,その物を留置しておけるという担保物権のことをいいます。
要するに,債権について弁済が無い限り,預かっている物を返還しなくてもよいという権利です。物を留置することによって,相手方に債務の履行を促すという効力を持っています。
ただし,留置権によって担保できる債権は,その留置している目的物に関連する債権でなければなりません。
解釈上認められている担保物権
前記のとおり,基本的な担保物権は民法に定められていますが,民法上の明文規定がないものであっても,解釈上,担保物権として認められているものがあります。
典型担保以外の担保物権のことを「非典型担保」と呼ぶことがあります。
解釈上認められる非典型担保としては,以下のようなものがあります。
譲渡担保
譲渡担保とは,権利者が,債務者(または第三者)が有する財産を譲り受け,被担保債権の弁済がなされたならば,その財産を返還するという担保物権です。取引実務上用いられていた手法が,非典型担保として承認されたものです。非典型担保のうちで最も代表的なものといえるでしょう。
仮登記担保
仮登記担保とは,あらかじめ,債務者が弁済をしない場合には目的物の所有権を完全に権利者に移転させることを合意した上で,その目的物に仮登記(仮登録)を設定しておくという担保物権です。
所有権留保
所有権留保とは,売買代金の支払いの確保のために,売買代金が弁済されるまでの間は売主に売買目的物の所有権を留保したままにしておき,代金が弁済された時点で,買主に目的物の所有権を移転するという担保物権です。
これも,自動車売買などでよく用いられている手法です。
特別法上の担保物権
前記のほか,民法以外の特別法においても担保物権が認められる場合があります。特別法上の担保物権としては,以下のようなものがあります。
- 商事留置権
- 商事質権
- 自動車等の動産抵当権
- 工業等の財団抵当権
- 立木抵当権
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