内容証明郵便の効力とは?
何らかの紛争などが生じた場合,紛争の相手方などに対して,内容証明郵便によって書面を送付することがあります。
内容証明郵便で書面を送付したからといって,それだけで紛争が解決できるというものではありません。
しかし,内容証明郵便で書面を郵送することによって,ある特定の内容の書面を郵送したことを証拠として残すことができます。それにより,後日の相手方の反論を封じることができることがあります。
以下では,内容証明郵便にはどのような効力があるのかについて,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。
(著者:弁護士 志賀 貴 )
なお,弁護士による内容証明郵便作成のご依頼をご希望の場合は,弁護士による内容証明作成のご依頼をご覧ください。
内容証明郵便とは?
何らかの紛争が生じた場合,紛争の相手方等に対して,内容証明郵便によって書面を郵送することがあります。例えば,請求書を内容証明郵便で郵送するなどします。
内容証明郵便とは,「いつ,いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを,差出人が作成した謄本によって郵便局(日本郵便株式会社)が証明する制度」のことです(郵便局サイトを参照。)。
具体的には,同じ形式・内容の郵便書面を3通作成して郵便局に郵便物として差し出し,郵便局側で3通とも内容が同一であること,形式が整っていることを確認して,1通は郵便局で保管し,1通は差出人本人に返却され,もう1通を宛先に郵送することになります。
郵便局で内容を確認の上,郵送するのと同内容の1通を保管してもらうことにより,ある特定の内容の書面を特定の日に特定の人に対して郵送したということを,証拠として残すことができるようになります。
郵便局側で証明してもらえるのは,あくまで「ある特定の内容の書面を特定の日に特定の人に対して郵送したということ」という外形的な事実だけですので,その書面の内容が真実であるかどうかまで証明してもらえるわけではありません。
また,内容証明郵便では,相手方に実際に配達されたかどうかは証明できません。相手方に配達されたことまで証拠として残しておくには,別途,配達証明を付けておく必要があります。
内容証明郵便によって紛争が解決するのか?
前記のとおり,紛争・トラブルが生じた場合,その相手方に対して,配達証明付きの内容証明郵便を送付することが少なくありません。
もっとも,内容証明郵便によって書面を送付するのは,あくまで,その書面を郵送したことや送付した書面の内容等を証拠化しておくことにあります。内容証明郵便にそれ以上の効力はありません。
内容証明郵便であるということによって何らかの法的な拘束力が生じたり,相手方に何らかの法的義務を課すことができる,というようなものではないということです(ただし,その内容が法的意味を持っている場合には法的効果が生じることはあります。)。
したがって,内容証明郵便で請求書などを郵送することによって,ただちに紛争やトラブルが解決するわけではありません。
もちろん,証拠をとっておくために内容証明郵便で郵送するのですから,相手方に本気であることを伝えることができ,それによって心理的なプレッシャーを相手に与える結果,紛争やトラブルの解決につながるということはあり得るでしょう。
弁護士名義で内容証明郵便を郵送する場合には,そういう本気であることを伝えて心理的なプレッシャーを与えるという意味合いがより強くなることは確かかもしれません。
しかし,だからといって,内容証明郵便を郵送すれば,それだけで紛争やトラブルが解決するというものではないのです。
内容証明郵便を利用する意味
前記のとおり,内容証明郵便を利用するのは,あくまで,特定日に特定人に対して郵便を送ったことと,その郵便の文面を証拠として残しておくことにあります。
したがって,内容証明郵便を送れば紛争やトラブルがただちに解決できるものではありません。
とはいえ,ただ自分の意思を相手に伝えてそれを証拠にしておく,というだけの意味しかないわけでもありません。
一定の意思表示や事実の表明をすることによって,一定の法的効果が生じるという場合があります。
その場合に,内容証明郵便を利用すれば,その意思表示等をしたことを証拠として残しておくことができ,当該意思表示等によって発生した法律効果を容易に主張できるようになります。
場合によっては,その意思表示等の効果を主張できれば,それだけで紛争が解決することもありますから,重要な意味を持ってきます。
代表的なケースとしては,以下のものがあります。
時効の援用
消滅時効や取得時効の効果を主張するには,時効の援用をする必要があります。時効の援用とは,当該時効の効果を享受する旨の意思表示です。
例えば,借金の消滅時効が完成したので消滅時効を援用すると主張することにより,借金の支払いをしなくてよくなります。
配達証明付きの内容証明郵便によって,相手方に対し時効の援用の意思表示をしておくことによって,後に相手方から時効の援用をしていないから時効の効果は発生していないという反論を言わせないようにしておけるのです。
>> 時効の援用とは?
時効の中断における催告
時効の援用とは逆に,時効期間満了によって時効が完成することによって不利益を受けるおそれがある場合,時効期間満了前に時効を中断させることで,時効完成による不利益を回避することができます。
時効を確定的に中断させるためには,訴訟を提起するなどをしなければなりません。しかし,もうすぐに時効期間満了が迫っているため,訴訟提起などをする猶予がないということもあります。
その場合には,「催告」をすることによって6か月間だけ時効の完成を引き延ばすことができます。その6か月のうちに訴訟提起などをすれば,確定的に時効を中断させることができます。
この催告も,配達証明付き内容証明郵便で行うのが通常です。それにより,後に相手方から時効が完成しているという反論をさせないようにすることができるのです。
>> 時効の中断とは?
遅延損害金の発生
期限の定めがない債権の場合,遅延損害金(遅延利息),その債権について「催告」をした時から相当期間経過後に発生します。催告をしておかないと,遅延損害金が発生しないのです。
そこで,期限の定めのない債権について遅延損害金を発生させるため,配達証明付きの内容証明郵便で相手方に催告をしておきます。催告とは,要するに,債権の支払いを請求するということです。
配達証明付きの内容証明郵便で相手方に催告することにより,後に相手方から催告がないので遅延損害金は発生していないという反論をさせないようにすることができるのです。
解除権の発生
契約を解除する場合も,契約を解除する旨の意思表示を相手方に対してしなければなりません。この契約解除の意思表示も,配達証明付きの内容証明郵便で行うのが通常です。
契約解除の意思表示を配達証明付きの内容証明郵便で行うことにより,後に相手方からまだ契約は解除されていないという反論をさせないようにすることができるのです。
>> 契約の解除とは?
重要書面は配達証明付き内容証明郵便で郵送しましょう
前記の例のとおり,配達証明付きの内容証明郵便を利用することで,自分が相手方に何らかの意思表示や事実の表明をしたことを証拠として残しておき,それによって,後の相手方からの反論を封じることができるようになるわけです。
内容証明郵便だけで紛争解決を直接的にできるわけではありませんが,相手方からの反論を封じることにより,間接的に紛争解決に役立つことは多くあるのです。前記の例の場合に限られないでしょう。
したがって,何らかの重要な書面を送る場合には,普通郵便や書留郵便ではなく,配達証明付きの内容証明郵便で送付することをお勧めします。
なお,繰り返しになりますが,内容証明郵便は相手方に配達したことまでは証明できないので,配達証明も一緒につけておくことが肝要です。
>> 配達証明(郵便局サイト)
内容証明郵便の効力に関連するページ
内容証明郵便の効力についてより詳しく知りたい方は,以下の関連ページもご覧ください。
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