賃金の毎月払いの原則とは?
賃金の支払いについては労働基準法において厳格な原則が定められています。ここでは,そのうちの毎月払いの原則について,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。
賃金の毎月払いの原則とは?
(著者:弁護士 志賀 貴 )
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毎月払いの原則
毎月払いの原則とは,毎月1日から末日までの間に少なくとも1回は賃金を支払わなければならないとする原則のことをいいます(労働基準法第24条第2項本文)。
例えば,半年に1回支払うとか,1年に1回支払うとか,相当程度長期の期間ごとに1回などという賃金の支払い態様であると,労働者の生活はかなり不安定になってしまいます。
やはり,それなりの一定のスパンで賃金が支払われる方が安定しているといえるでしょう。
そこで,このように賃金がまちまちに支払われることによって生ずる労働者の生活の不安定を解消するために,賃金は毎月払いが原則とされているのです。
賃金の支払の原則には,この毎月払いのほかに一定期日払いというものがあります。
これは,賃金は一定の期日を定めて支払わなければならないとする原則ですが,この一定期払いと毎月払いの原則は,両者相まって,毎月一定の期日に賃金が支払われるようにして労働者の生活を安定させるという機能を有しています。
そのため,併せて,毎月一定期日払いの原則と呼ばれることもあります。
>> 賃金支払いの諸原則とは?
毎月払いの例外
前記のとおり,賃金は,毎月1回以上支払われなければならないのが原則です。
ただし,臨時に支払われる金銭や賞与,これらに準ずるもので厚生労働省令(労働基準法施行規則)で定める賃金については,この毎月払いの原則は適用されず,毎月支払わなくてもよいとされています(労基法24条2項ただし書き)。
ちなみに,労働基準法施行規則で定める賃金とは,以下のとおりです(労基規則8条)。
- 1か月を超える期間の出勤成績によつて支給される精勤手当
- 1か月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
- 1か月を超える期間にわたる事由によつて算定される奨励加給又は能率手当
これらの賃金は,その性質上,そもそも毎月支払われるとは限られないものであるため,毎月払いの例外とされています。
とはいえ,もちろん,毎月支払われる賃金があることが前提となることは言うまでもないでしょう。
年俸制と毎月払いの原則
賃金を月額で定めるのではなく,1年単位で賃金額を定めるのが,いわゆる「年棒制」です。この年棒制も,就業規則などで明確に定める限りは違法となるわけではありません。
しかし,その支払いについては話が別です。年棒制というと,1年に1回支払えばよいというように思われがちですが,そうではありません。
1年に1回しか支払われないとすると,労働者の生活は非常に不安定になってしまう危険性があります。そのため,年棒制で賃金を定めた場合であっても,毎月払いの原則は維持しなければならないとされています。
したがって,年俸制であるからといって,1年に1回支払うというのでは毎月払いの原則に違反することになります。
つまり,年棒制で定められた賃金を,毎月分割して支払う必要があるということです。年棒を12で割って,毎月一定金額を支払うというのが通常でしょう。
ただし,年棒金額をすべて前もって全部支払っていた場合には,労働者の生活が不安定になることはないため(実際にはほとんど無いでしょうが),この場合に限って全額払いの原則に違反しないものと考えられています。
>> 年俸制とは?
毎月払いの原則に違反した場合
この賃金の毎月払いの原則に違反した場合,使用者は,刑事罰として,30万円以下の刑罰を科される場合があります(労働基準法120条1号)。
また,労働者は,所定期日に賃金の支払いがなければ,その未払い部分を支払いを使用者に対して請求することができますし,併せて遅延損害金も付して支払うように請求することができます。
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