残業代など割増賃金の計算に関するよくあるご質問
残業代・休日手当・深夜手当など割増賃金の金額は,労働基準法等の法令に基づいて計算する必要があります。とはいえ,この法令もなかなか複雑で計算自体も容易ではない部分があります。
ここでは,残業代・深夜手当・休日手当など割増賃金の計算方法について,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所が,Q&A形式でご説明いたします。
(著者:弁護士 志賀 貴 )
なお,労働事件・雇用問題に関するご相談は,弁護士による労働事件・雇用問題の法律相談をご覧ください。
割増賃金の計算手順
- Q. 月給制の場合,割増賃金はどのように計算するのですか?
- A. 月給制の場合は,1時間当たりの基礎賃金に,割増率を乗じ,さらにそれに労働時間を乗じすることによって算定できます。1時間当たりの基礎賃金は,月ごとの所定賃金を月間の所定労働時間で割って算出します。
【1時間当たり基礎賃金 × 割増率 × 労働時間(残業時間等)】 - Q. 日給制の場合,割増賃金はどのように計算するのですか?
- A. 月給制の場合は,1時間当たりの基礎賃金に,割増率を乗じ,さらにそれに労働時間を乗じすることによって算定できます。1時間当たりの基礎賃金は,1日ごとの所定賃金を日間所定労働時間で割って算出します。
【1時間当たり基礎賃金 × 割増率 × 労働時間(残業時間等)】 - Q. 時間単位と分単位のどちらで計算するのでしょうか?
- A. 残業代等割増賃金の計算については,分単位で計算することになります。
- Q. 就業規則では時間単位で計算すると規定されているのですが,それでも分単位で計算してよいのでしょうか?
- A. はい。仮に就業規則等で時間単位とすると定められていても,分単位で計算して請求することができます。
基礎賃金の算定
- Q. 割増賃金計算の基礎となる基礎賃金とは何ですか?
- A. 所定賃金から除外賃金を除いたものです。
- Q. 所定賃金とは何ですか?
- A. 使用者との間の労働契約や就業規則などで定められている賃金です。一般的には,基本給と呼ばれるものです。これには手当など(除外賃金を除く)も含まれることがあります。
- Q. 各種の手当はどのように扱うのですか?
- A. 各種手当でも,就業規則などで支給の基準が明確に定められており,使用者に支払の義務が課される性質のものは賃金に当たると解されています。したがって,そのような賃金に当たる賃金は,除外賃金に該当しない限り,所定賃金に含まれることになります。
- Q. 除外賃金とはどのようなものですか?
- A. 除外賃金は,労働基準法施行規則第21条に規定されています。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
- Q. 所定労働時間とは何ですか?
- A. 使用者との間の就業規則や労働契約で定められた労働時間のことをいいます。
- Q. 月給制の場合,所定労働時間はどうやって算出するのですか?
- A. 月給制の場合,1か月当たりの所定労働時間を算出する必要があります。これは,就業規則等で各月ごとに決められている場合であればそれに従います。そうでない場合には,通常,年間の所定労働日数を12で割って1か月当たりの平均所定労働日数を算出し,それに1日の所定労働時間を乗じて,1か月当たりの所定労働時間を算出することになります。
- Q. 日給制の場合,所定労働時間はどうやって算出するのですか?
- A. 日給制の場合,1日当たりの所定労働時間を算出する必要があります。これは,就業規則等で各日ごとに決められている場合であればそれに従います。ただし,日ごとに労働時間が異なる場合には,1週間の所定労働時間を1週間の労働日数で割って1日の平均所定労働時間を算出することになります
- Q. 1時間当たりの基礎賃金はどうやって算出するのですか?
- A. 月給制の場合には,1か月当たりの基礎賃金を1か月当たりの所定労働時間で割って,1時間当たりの基礎賃金を算出します。日給制の場合には,1日当たりの基礎賃金を1日当たりの所定労働時間で割って,1時間当たりの基礎賃金を算出することになります。
割増賃金の割増率
- Q. 残業代の割増率はどのくらいですか?
- A. 残業代の割増率は,最低でも基礎賃金の1.25倍です。ただし,一定の大企業については,1月に60時間を超える時間外労働(残業)に対しては基礎賃金の1.50倍以上の割増賃金を支払わなければならないという特別の規定が適用されることになります。
- Q. 残業代の割増率が1.5倍以上となるのはどのような場合ですか?
- A. 1月の時間外労働が60時間を超える場合,その60時間を超える部分については,時間外労働に対する割増賃金の割増率が1.5倍以上となります(労基法37条1項ただし書き)。ただし,この1.5倍以上の割増率の規定は,中小企業については適用が留保されているため,実際にこの規程が適用されているのは,一定の大企業だけです。
- Q. 残業代の割増率が1.5倍以上となるという規定が適用されるのは,どのような会社ですか?
- A. 1月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金の割増率を1.5倍以上とすると定める労基法37条1項ただし書きは,中小企業については適用が留保されています(労基法138条)。具体的には,以下の事業者には,労基法138条の規定は適用がありません。
- 資本金額または出資金額が3億円以下の場合および常時使用する従業員が300人以下の場合
- 小売業の場合には,資本・出資金額が5000万円以下の場合及び常時使用する従業員が50人以下の場合
- サービス業の場合には,資本・出資金額が5000万円以下の場合及び常時使用する従業員が100人以下の場合
- 卸売業の場合には,資本・出資金額が1億円以下の場合及び常時使用する従業員が100人以下の場合
- Q. 深夜手当の割増率はどのくらいですか?
- A. 深夜手当の割増率は,最低でも基礎賃金の1.25倍です。
- Q. 休日手当の割増率はどのくらいですか?
- A. 休日手当の割増率は,最低でも基礎賃金の1.35倍です。
- Q. 深夜に残業した場合の割増賃金の割増率はどのくらいですか?
- A. 深夜に残業した場合の割増賃金の割増率は,最低でも,残業代の割増率と深夜手当の割増率を併せた基礎賃金の1.50倍となります。
- Q. 法定休日に残業した場合の割増賃金の割増率はどのくらいですか?
- A. 休日に残業した場合の割増賃金の割増率は,休日手当の割増率と同じです。つまり,最低でも基礎賃金の1.25倍です。
- Q. 法定休日の深夜に労働した場合の割増賃金の割増率はどのくらいですか?
- A. 法定休日の深夜労働の割増率は,休日手当の割増率と深夜手当の割増率とを併せた基礎賃金の1.60倍となります。
- Q. 法定休日の深夜に残業した場合の割増賃金の割増率はどのくらいですか?
- A. 法定休日の深夜残業の割増率は,休日手当の割増率と深夜手当の割増率とを併せた基礎賃金の1.60倍となります。
割増賃金の計算に関連する記事
この記事がお役に立ちましたらシェアお願いいたします。
労働者側の労働事件ならLSC綜合法律事務所まで
労働者側での労働事件でお困りの方,労働事件に精通した弁護士をお探しの方がいらっしゃいましたら,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所にお任せください。
労働者側労働事件・雇用問題の法律相談・ご依頼をご希望の方は【 042-512-8890 】からご予約ください。
LSC綜合法律事務所
所在地:〒190-0022 東京都立川市錦町2丁目3-3 オリンピック錦町ビル2階
ご予約のお電話:042-512-8890
代表弁護士 志賀 貴
日本弁護士連合会:登録番号35945(旧60期)
所属会:第一東京弁護士本部および多摩支部
>> 日弁連会員検索ページから確認できます。
アクセス
最寄駅:JR立川駅(南口)・多摩都市モノレール立川南駅から徒歩5~7分
駐車場:近隣にコインパーキングがあります。
※ 詳しい道案内は,下記各ページをご覧ください。