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労働者の労働問題の基礎知識

日給制の場合に残業代など割増賃金はどのように計算するのか?

未払い残業代等を請求するためには,まず何より,法令に従って,できる限り正確な割増賃金の金額を算出しておく必要があります。

日給制の場合には日給制特有の計算方法も必要となってきます。

ここでは,日給制の場合に残業代など割増賃金はどのように計算するのかについて,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所が詳しくご説明いたします。

なお,労働事件・雇用問題に関するご相談は,弁護士による労働事件・雇用問題の法律相談をご覧ください。

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割増賃金の計算式

労働基準法上,使用者は,労働者時間外労働法外残業)させた場合,深夜労働させた場合,法定休日労働させた場合には,労働者に対し,基礎賃金を一定の割増率で割り増した「割増賃金」を支払わなければならないとされています。

この割増賃金には,時間外労働に対する割増賃金(いわゆる「残業代」)深夜労働に対する割増賃金(いわゆる「深夜手当」)休日労働に対する割増賃金(いわゆる「休日手当」)があります。

これらの割増賃金を計算は,法令によって定められていますが,若干,計算方法が分かりにくい部分があります。

また,給与形態が月給制なのか日給制なのかによっても,割増賃金の計算方法が異なってきます。

そこで,以下の具体例に沿って,日給制の場合の割増賃金の計算方法と手順についてご説明いたします。

  • 基本給:1日1万4000円
  • 通勤手当:交通費の実費支給
  • 所定労働時間:月曜日から金曜日は午前9時から午後18時まで休憩1時間を除く1日8時間,土曜日は午前9時から16時まで休憩1時間を除く6時間,日曜日は午前9時から午後15時まで休憩1時間を除く1日5時間
  • 出勤日:日,月,火,水,土曜日が出勤日であるとします。

>> 割増賃金の計算方法と手順(基本)

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所定賃金の確認

残業代等割増賃金を計算するに当たっては,計算の基礎となる賃金(基礎賃金)を算出しておく必要があります。

この基礎賃金を算出するためには,まずそもそもの所定賃金の金額を確認しておく必要があります。

所定賃金とは,労働契約就業規則などで定められている賃金のことをいいます。通常は,単に給与や給料,あるいは基本給と呼ばれるものです。

したがって,まずは,労働・雇用契約書から,この所定賃金はいくらなのかということを確認する必要があります。

前記の具体例でいえば,基本給1万5000円が所定賃金ということになります。

なお,前記具体例では,通勤手当については実費支給ですので,賃金には該当しないと考えられます(なお,実費支給ではなく一律定額支給のような場合には,賃金に該当する場合もあり得ます。)。

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基礎賃金の確認

残業代・休日手当・深夜手当といった割増賃金は,算定の基礎となる賃金に一定の割増率を乗じて計算することになります。

したがって,割増賃金計算においてまずやるべきことは,この算定の基礎賃金の金額を算出しておくことです。

基礎賃金の金額は,一般的には,所定賃金の金額と同額となりますが,基礎賃金と所定賃金とは必ずしも一致するとは限りません。

各種の手当などが基本給のほかにも所定賃金として支給されている場合には,その各種手当が賃金に該当するものであるかどうかを検討する必要があります。

また,賃金に該当するものであっても,一定の賃金は,割増賃金算定の基礎賃金から除かれると規定されています。この基礎賃金から除かれる各種手当等のことを「除外賃金」と呼んでいます。

したがって,基礎賃金は,【 所定賃金 - 除外賃金 】の計算式によって計算することになります。

前記具体例においては,除外賃金はありませんので,基礎賃金額は,基本給そのままで1万5000円ということになります。

>> 除外賃金とは?

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所定労働時間の確認

基礎賃金を算出できたとしても,それだけでは残業代などの割増賃金の金額を計算することはできません。割増賃金を計算するためには,この基礎賃金の1時間当たりの金額を算出する必要があるからです。

この1時間当たりの基礎賃金を算出する前提として,所定労働時間を確認しておく必要があります。

労働時間とは,労働者が使用者の指揮命令下において労働を提供する時間のことをいいます。そして,就業規則や労働契約などであらかじめ定められている労働時間のことを,所定労働時間といいます。

残業代等の割増賃金を計算する場合には,まずこの所定労働時間を算出して,1時間当たりの基礎賃金を計算しなければなりません。

もっとも,この残業代計算の基礎とする所定労働時間は,必ずしも単純に毎日の所定労働時間を足していけばいいというものではありません。

日給制の場合,労働・雇用契約において1日の所定労働時間が明確に定められているのであれば,それに従うことになるでしょう。

もっとも,日によって所定労働時間が異なるという場合もあります。その場合には,1週間の所定労働時間数から1日の平均所定労働時間数を算出し,それを基準として計算をすることになります。

>> 所定労働時間とは?

1週間の所定労働日数

1日の平均所定労働時間数を算出するためには,まず1週間の所定労働日数を算出しておく必要があります。所定労働日数は,労働・雇用契約によって定められている当該1週間の出勤日数です。

なお,1週間の始期及び終期については,労働・雇用契約で1週間とは●曜日から●曜日までという決まりがあればそれに従いますが,そのような定めがない場合には,さまざまな見解があるものの,日曜日を始期として土曜日までを1週間と考えるのが通常でしょう。

前記具体例の場合であれば,所定労働日数は5日ということになります。

1日当たりの平均所定労働時間数

次に1日当たりの平均所定労働時間数を算出することになります。まず,各日の所定労働時間数を合計し,それを前記の1週間の所定労働日数で割って,1日当たりの平均所定労働時間数を算出します。

具体例の場合は,日曜日は5時間,土曜日は6時間,月曜日から水曜日までは各8時間ですから,合計労働時間は35時間となります。これを5日で割ると1日7時間が平均所定労働時間数となります。

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1時間当たりの基礎賃金の算出

残業代など割増賃金の計算は,1年単位・1月単位などではなく,1時間当たりの基礎賃金を基本として算定するのが原則です。

したがって,基礎賃金の金額が算出できた後にすることは,その基礎賃金の1時間当たりの金額を算出する必要があります。

日給制の場合で所定労働時間が一定していない場合には,1週間の所定労働時間数から1日当たりの平均所定労働時間数を算出して,1時間当たりの基礎賃金を算出します。

前記具体例によれば,基礎賃金は1万4000円であり,これを1日当たりの平均所定労働時間数7時間で割りますから,1時間当たりの基礎賃金は2000円ということになります。

>> 割増賃金算定の基礎賃金はどの期間を単位とするのか?

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実労働時間の確認

残業代・深夜手当・休日手当は,実際に時間外労働をした時間,深夜労働をした時間,休日労働をした時間に応じて支払われることになります。

そこで,これらの時間外労働・深夜労働・休日労働をした実労働時間を算出しておく必要があります。

この実労働時間は,実際に労働をした時間です。タイムカードなどによって算定しておく必要があるでしょう。また,労働時間数を算出する場合には,1分単位で算出しておくのが通常です。

したがって,実際に計算する際には,「1時間当たりの基礎賃金」ではなく,「1分当たりの基礎賃金」を算出しておいた方が計算しやすいでしょう。

1分当たりの基礎賃金は,1時間当たりの基礎賃金を60で割ればよいだけです。

前記具体例の場合,給与締日は毎月20日ですから,21日から翌月20日までの合計実労働時間数を算出することになります。

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割増賃金の算出

前記の手順で算出した1時間当たりの基礎賃金をもとに,残業代などの割増賃金の金額を算出します。計算式は,以下のとおりです。

  • 【 1時間当たり基礎賃金 × 時間外労働時間 × 1.25 = 残業代の金額 】
  • 【 1時間当たり基礎賃金 × 深夜労働時間 × 1.25 = 深夜手当の金額 】
  • 【 1時間当たり基礎賃金 × 休日労働時間 × 1.35 = 休日手当の金額 】

※なお,大企業については,月に60時間を超える部分の時間外労働については,割増率が1.25倍ではなく,1.5倍になります。

1分単位で実労働時間を計算する場合には,1時間当たりの基礎賃金額を60で割って1分当たりの基礎賃金額を算出すればよいだけです。

前記具体例であれば,1時間当たりの基礎賃金は2000円ですので,これを基にして,割増賃金額を計算することになります。

たとえば,1日の時間外労働時間が,2時間分であったとすれば,時間外割増賃金の額は5000円となります。

>> 残業代など割増賃金の割増率はどのくらいか?

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