残業代など割増賃金の割増率はどのくらいか?
時間外労働・深夜労働・休日労働に対しては,基礎賃金に一定の割合で割増をした割増賃金を支払わなければなりません。
ここでは,割増賃金の割増率はどのくらいなのかについて,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。
残業代など割増賃金の割増率はどのくらいか?
(著者:弁護士 志賀 貴 )
なお,労働事件・雇用問題に関するご相談は,弁護士による労働事件・雇用問題の法律相談をご覧ください。
割増賃金の割増率
労働基準法では,使用者は,労働者が時間外労働・深夜労働・休日労働をした場合には,その労働者に対して,基礎賃金に一定の割合で割り増しをした「割増賃金」を支払わなければならないと定めています。
時間外労働に対する割増賃金とはいわゆる「残業代・残業手当」です。また,深夜労働に対する割増賃金は「深夜手当」,休日労働に対する割増賃金は「休日手当」などと呼ばれることもあります。
どの程度の割増がなされるのかについては,労働基準法に割増率の最低基準が定められています。なお,労働契約や就業規則で別途定めることもできますが,労働基準法で定める割増率を下回ることはできません。
>> 割増賃金とは?
時間外労働割増賃金(残業代)の割増率
労働基準法においては,使用者は,労働者を1日8時間または1週間40時間を超えて働かせることは原則としてできず,これらを超えて労働させることを「時間外労働」といい,これに対しては割増賃金(残業代)を支払わなければならないと規定しています。
時間外労働割増賃金の割増率の最低基準は「基礎賃金の25パーセント増し」です。つまり,時間外労働に対しては,基礎賃金の1.25倍以上の割増賃金を支払わなければならないということです。
さらに,大企業については,1か月の時間外労働時間が60時間を超える場合には,その超える部分については,1.25倍どころか,「基礎賃金の50パーセント増し」,すなわち,1.5倍以上の割増賃金を支払わなければならないものとされています。
なお,中小企業についても,2023年4月1日から,1か月60時間を超える時間外労働の割増賃金が「基礎賃金の50パーセント増し」になります。
時間外労働が深夜労働にも当たる場合
時間外労働が,後述する深夜労働にも該当するという場合があります。
この場合の割増賃金の割増率は「時間外労働の割増率+深夜労働の割増=基礎賃金の50パーセント増し」,すなわち,基礎賃金の1.5倍以上ということになります。
月60時間超の時間外労働が深夜労働にも当たる場合
上記のとおり,大企業については(中小企業は2023年4月1日から)月60時間を超える時間外労働の割増率は50パーセント増しとなります。
この月60時間を超える時間外労働が深夜労働にも当たる場合には,その割増率は「基礎賃金の75パーセント増し」,すなわち,基礎賃金の1.75倍以上ということになります。
時間外労働が休日労働にも当たる場合
時間外労働が,後述する法定休日労働にも該当するという場合があります。
この場合には,時間外労働は休日労働に含まれていると考えるため,その割増賃金の割増率は「法定休日労働の割増率35パーセント増し」のみ,すなわち,基礎賃金の1.35倍以上ということになります。
時間外労働が深夜労働・休日労働のいずれにも当たる場合
時間外労働が,深夜労働でもあり法定休日労働でもあるということもあり得ます。
この場合,時間外労働は休日労働に含まれるため,「休日労働の割増率+深夜労働の割増率=基礎賃金の60パーセント増し」のみ,すなわち,基礎賃金の1.6倍以上ということになります。
深夜労働割増賃金(深夜手当)の割増率
労働基準法においては,使用者は,労働者を午後10時から翌午前5時の間(深夜時間帯)に働かせることは原則としてできず,深夜時間帯に労働させることを「深夜労働」といい,これに対しては割増賃金(深夜手当)を支払わなければならないと規定しています。
深夜労働割増賃金の割増率の最低基準は「基礎賃金の25パーセント増し」です。つまり,深夜労働に対しては,基礎賃金の1.25倍以上の割増賃金を支払わなければならないということです。
深夜労働が時間外労働にも当たる場合
深夜時間帯での労働が,時間外労働にも該当するという場合があります。
この場合の割増賃金の割増率は「時間外労働の割増率+深夜労働の割増=基礎賃金の50パーセント増し」,すなわち,基礎賃金の1.5倍以上ということになります。
深夜労働が月60時間超の時間外労働にも当たる場合
前記のとおり,大企業については(中小企業は2023年4月1日から)月60時間を超える時間外労働の割増率は50パーセント増しとなります。
この月60時間を超える時間外労働が深夜労働にも当たる場合には,その割増率は「基礎賃金の75パーセント増し」,すなわち,基礎賃金の1.75倍以上ということになります。
深夜労働が休日労働にも当たる場合
深夜時間帯での労働が,後述する法定休日労働にも該当するという場合があります。
この場合の割増賃金の割増率は「深夜労働の割増率+法定休日労働の割増=基礎賃金の60パーセント増し」,すなわち,基礎賃金の1.6倍以上ということになります。
深夜労働が時間外労働・休日労働のいずれにも当たる場合
深夜労働が,時間外労働でもあり法定休日労働でもあるということもあり得ます。
この場合,時間外労働は休日労働に含まれるため,「休日労働の割増率+深夜労働の割増率=基礎賃金の60パーセント増し」のみ,すなわち,基礎賃金の1.6倍以上ということになります。
休日労働割増賃金(休日手当)の割増率
労働基準法においては,使用者は,労働者を週1回または4週に4回以上の法定休日に働かせることは原則としてできず,法定休日に労働させることを「休日労働」といい,これに対しては割増賃金(休日手当)を支払わなければならないと規定しています。
休日労働割増賃金の割増率の最低基準は「基礎賃金の35パーセント増し」です。つまり,休日労働に対しては,基礎賃金の1.35倍以上の割増賃金を支払わなければならないということです。
なお,法定外休日における労働は休日労働割増賃金の支払いはなされませんが,それが時間外労働に当たる場合には,前記の時間外労働割増賃金(残業代)が支払われることになります。
休日労働が時間外労働にも当たる場合
法定休日労働が,時間外労働にも該当するという場合があります。
この場合,時間外労働は休日労働によって評価済みであると考えられるため,割増賃金の割増率は「休日労働の割増率=基礎賃金の35パーセント増し」,すなわち,基礎賃金の1.35倍以上ということになります。大企業における月60時間超残業の場合も同様です。
休日労働が深夜労働にも当たる場合
法定休日労働が,深夜労働にも該当するという場合があります。
この場合の割増賃金の割増率は「時間外労働の割増率+法定休日労働の割増=基礎賃金の60パーセント増し」,すなわち,基礎賃金の1.6倍以上ということになります。
休日労働が時間外労働・休日労働のいずれにも当たる場合
休日労働が,時間外労働でもあり深夜労働でもあるということもあり得ます。
この場合,時間外労働は休日労働に含まれるため,「休日労働の割増率+深夜労働の割増率=基礎賃金の60パーセント増し」のみ,すなわち,基礎賃金の1.6倍以上ということになります。
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