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労働者の労働問題の基礎知識

月60時間を超える時間外労働の場合の残業代の割増率とは?

平成22年4月1日施行の改正労働基準法によって,月60時間を超える時間外労働に対しては,通常の場合を超える割増率での残業代を支払わなければならないことになりました。

ここでは,残業時間が月60時間を超える場合の割増賃金の割増率について,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。

なお,労働事件・雇用問題に関するご相談は,弁護士による労働事件・雇用問題の法律相談をご覧ください。

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月60時間を超える残業の抑制

時間外労働が長時間化すればするほど,それだけ労働者の私的な生活が奪われることになってしまい,それこそ仕事漬けの生活になってしまいます。

また,長時間労働は,労働者の心身に悪影響を及ぼすことは言うまでもありません。過酷な長時間労働によって,過労死や過労による鬱などからの自殺などの事件もあります。

たとえば,厚生労働省からは,過労死の労災認定基準として「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準」が発表されています。

それによれば,「おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど,業務と(脳疾患等の)発症との関連性が徐々に強まると評価できる」とされ,また「(脳疾患等の)発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって,1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は,業務と発症との関連性が強いと評価できる」としています。

そこで,使用者に割増賃金の負担を課すことによって,長時間労働を抑制し,労働者のワークライフバランスを図ろうとする趣旨から,月60時間を超える時間外労働に対しては,通常の場合の時間外手当(残業代)の2倍の割増率での時間外手当を支払わなければならないという規定(労働基準法第37条第1項ただし書き)が,労働基準法改正によって設けられました。

使用者に対して割増賃金支払いの負担を大きくすることによって,労働者の長時間残業を抑制させようというのが,この規定の狙いです。

この改正規定は平成22年4月1日から施行されています。

>> 時間外労働に対する割増賃金とは?

月60時間を超えた場合の残業代の割増率

前記の規定は,具体的にいうと,月60時間を超える時間外労働の割増賃金(残業代)について,その割増率を,「基礎賃金の1.5倍以上」の割増としなければならないというものです。

通常の時間外労働に対する割増賃金(残業代)の割増率は,基礎賃金の1.25倍以上の割増です。

ということは,上記の規定が適用される場合には,通常の場合の実に2倍の割増率での残業代を支払わなければならなくなるということです。

たとえば,月の残業時間が100時間であったとすると,そのうち60時間までは基礎賃金の1.25倍以上の残業代を支払えば足りますが,残りの40時間分については1.5倍以上の残業代を支払わなければならないということになります。

また,この60時間超の残業の割増率は,深夜残業の場合にも適用されます。

つまり,月60時間を超える残業が深夜に行われた場合には,60時間超の割増率1.5 + 深夜労働の割増率1.25の合計1.75倍以上の割増賃金を支払う必要があります。

休日労働については,法定休日における休日労働の場合には,従前どおり,1.35倍以上の割増ということになっていますが,法定外休日における労働の場合は,時間外労働の規定が適用されますので,月60時間を超える時間外労働に当たる場合には,やはり1.5倍以上の割増が適用されることになります。

>> 残業代など割増賃金の割増率はどのくらいか?

中小企業への適用猶予の期限

なお,この規定は,現在(2022年9月17日時点),中小企業に対してはその適用が猶予されています。そのため,この規定が適用されるのは,今のところ大企業だけに限られています。

具体的には,「中小事業主(その資本金の額又は出資の総額が3億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については5000万円,卸売業を主たる事業とする事業主については1億円)以下である事業主及びその常時使用する労働者の数が300人(小売業を主たる事業とする事業主については50人,卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については100人)以下である事業主をいう。)の事業については、当分の間、第37条第1項ただし書の規定は、適用しない。」とされています(法第138条,附則第3条第1項)。

ただし,この猶予期間は2023年3月31日までです。2023年4月1日からは,中小企業についても,大企業と同じく,月60時間を超える時間外労働の割増賃金は1.5倍以上とされることになっています。

現時点における中小企業への適用猶予の範囲

なお,参考として,現時点において適用猶予される中小企業の範囲は以下のとおりです。

何がここでいう小売業・サービス業・卸売業に当たるのかなど,上記中小企業の業種については,以下の各ページをご参照ください。

>> 中小企業の業種(厚生労働省HPから)日本標準産業分類

小売業・サービス業・卸売業以外の業種の使用者

前記規定によれば,資本金額または出資の総額が3億円以下で,常時使用する労働者の人数が300人以下の企業は,1.5倍以上の残業代支払いが猶予される中小企業に当たるということになります。

ただし,小売業・サービス業・卸売業については,以下のとおり,1.5倍以上の残業代支払いが猶予される中小企業の範囲が異なっています。

小売業の使用者

使用者が小売業の場合には,資本金額又は出資総額が5000万円以下で,常時使用する労働者数が50人以下の場合に1.5倍以上の残業代支払いが猶予される中小企業に当たることになります。

サービス業の使用者

使用者がサービス業の場合には,資本金額又は出資総額が5000万円以下で,常時使用する労働者数が100人以下の場合に1.5倍以上の残業代支払いが猶予される中小企業に当たるとされています。

卸売業の使用者

使用者が卸売業の場合は,資本金額又は出資総額が1億円以下で,常時使用する労働者数が100人以下の場合に1.5倍以上の残業代支払いが猶予される中小企業に当たるとされています。

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