民事執行手続とは?
労働事件の勝訴判決で認められた権利を実現するために,民事執行手続という裁判手続を利用する場合があります。
ここでは,民事執行手続とはどのような手続なのかについて,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。
(著者:弁護士 志賀 貴 )
なお,労働事件・雇用問題に関するご相談は,弁護士による労働事件・雇用問題の法律相談をご覧ください。
民事執行手続とは
労働事件については,まず使用者との交渉から行うのが通常でしょう。しかし,交渉によって支払いをしてもらえない場合には,訴訟等の裁判をして回収を図る必要があることになります。
もっとも,訴訟をして勝訴判決を獲得したとしても,相手方が判決に従って支払ってくれなければ意味がありません。
まれに勘違いをなされる方もいらっしゃいますが,訴訟で勝訴判決を得たからといって,当然にその判決の内容が実現されるわけではありません。
裁判所が,その判決に従って相手方から残業代などの金銭を回収してくれるというわけではないのです。
判決の内容を実現するためには,相手方に任意で支払ってもらうか,あるいは,自分で別途回収するほかないのです。
そして,相手方が任意に支払いをしてこない場合には,自分で回収することになりますが,そのためには,判決の内容を強制的に実現する裁判手続が必要となってきます。それが「民事執行」手続なのです。
具体的にいえば,民事執行手続とは,国家権力の力を借りて,強制的に権利行使を実現する裁判手続のことです。
民事執行の類型
民事執行の手続には,さまざまな方法があります。代表的な手続は,強制執行と担保権執行です。
担保権執行
担保権執行とは.文字どおり,債権について何らかの担保を付けている場合に,その担保権を実行するという手続です。
代表的な例でいえば,不動産に抵当権を付けている場合に,その抵当権を実行するという場合がこれに当たります。
もっとも,未払い残業代や損害賠償等の請求権について担保を付けているという場合は考えられません。
したがって,労働事件の場合でいうと,この担保権執行が利用されるという場面は,労働債権に関する先取特権を実行できるという場合のほかはあまりないでしょう。
先取特権とは,特定の債権について認められる担保権のことです。未払い残業代を請求する権利などの債権についても,この先取特権が認められます。
担保権執行の場合には,訴訟をして判決を得るなどの手続を経なくても,いきなり民事執行をすることができますから,理論的には,未払い残業代請求権についても,訴訟等をせずに民事執行することは可能です。
ただし,実際には立証等の問題もあるため,先取特権実行が認められるのは,かなりレアケースに限られます。
強制執行
上記のとおり,労働事件においては,担保権執行を利用する場面はないかもしれません。
したがって,労働事件において利用される民事執行手続とすれば,やはり強制執行の手続をとるという場合であるかと思います。
強制執行については,一般的にも用いられている用語ですから,イメージはわきやすいかと思います。
相手方の財産を差し押さえて,その財産自体を取得したりまたはその財産を換価処分するなどして,債権の回収を図るという手続です(なお,金銭債権でない場合には,財産の差し押さえではない強制執行というものもあります。)。
例えば,相手方が所有している不動産や動産・債権などを差し押さえて,それを換価処分または直接に取り立てることによって,未払い残業代等などの金銭債権の回収を図ることができるようになります。
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