証拠保全手続とは?
労働事件を解決するための証拠が無いという場合,証拠保全手続という裁判手続を利用する場合があります。ここでは,証拠保全手続とはどのような手続なのかについて考えます。
(著者:弁護士 志賀 貴 )
なお,労働事件・雇用問題に関するご相談は,弁護士による労働事件・雇用問題の法律相談をご覧ください。
証拠の収集
労働事件を解決しようという場合,最終的には裁判手続になることも考えておく必要があるので,あらかじめ証拠をそろえておいた方がよいことは言うまでもありません。
もちろん,証拠があった方が,その証拠をもとに使用者と話をすすめることができるのですから,交渉も有利に進めることができます。
もっとも,本当は契約書やタイムカードなどの証拠があるはずなのに,使用者側が開示してくれないという場合も少なくありません。
そのような場合に備えて,訴訟を提起する前に証拠を確保しておくための裁判手続があります。それが「証拠保全手続」という手続です。
証拠保全手続
証拠保全手続とは,基本的に,証拠があると思われる場所に裁判官・裁判所書記官が赴いて,直接証拠を確保してくるという手続です(なお,文書の開示だけを求める場合などは,裁判所から開示を求める書面が使用者に送付されるだけという場合もあります。)。
裁判官や裁判所書記官が直接現場に赴いて,証拠を持っている人に対しその提出を求めるという手続ですから,使用者側に与える心理的なプレッシャーも考慮すると,かなり強力な手続であるといえます。
実際,証拠保全手続を行った場合,よほどのことがない限り,相手方は証拠を提示してくれるのが通常です(ただし,まれに証拠保全を拒絶する使用者がいます。)。
もっとも,証拠保全手続は,通常,相手方の営業時間中に裁判官が赴いて,仕事を一時中断してもらって,証拠の確保を行うという手続です。
そのため,証拠が全然無いような場所に行ったり,証拠保全手続を利用しなくても,裁判外で要求すれば容易に開示してくれるような場合にまで証拠保全手続をすることは,時間や労力の無駄になるばかりか,その相手方に迷惑となるおそれがあります。
また,請求しようとしている残業代等の裁判に必要とはいえないような資料まで保全しておくのは無意味ですし,何より営業秘密や個人情報の保護を害するおそれもあります。
そのため,証拠保全が認められるのは,証拠をあらかじめ確保しておく必要性がある場合に限られます。また,証拠保全をする場所に,目的としている証拠が存在する蓋然性があることも必要です。
具体的にいうと,証拠保全手続を申し立てる場合には,裁判外で未払い残業代等を請求したり,証拠の開示を要求したりしたが使用者側から拒否されたなどの経過から,証拠を改ざんされたり隠匿されたりする危険性があることや,その証拠がなければ公平な裁判をすることができないという事情,さらに,実際にその場所に目的とする証拠があることを示す事実などを主張する必要があります。
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