休日振替した場合に休日割増賃金は発生するのか?
休日に出勤した場合,その休日とは別の日にあらためて休日を割り当てる休日の振替措置がとられることがあります。
ここでは,休日振替した場合に休日割増賃金は発生するのかについて,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。
休日振替した場合に休日割増賃金は発生するのか?
(著者:弁護士 志賀 貴 )
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休日の振替
労働基準法では,使用者は労働者に対して最低でも週1回(変形週休制の場合は4週間に4回)以上の休日を付与しなければならないと定めてられています。この最低限の休日のことを「法定休日」といいます。
使用者は,労働者を法定休日に労働させた場合には,その休日労働に対して,基礎賃金の35パーセント増し以上の割増賃金(休日手当)を支払わなければなりません。
また,使用者は労働者に対して,上記法定休日以外にも休日を付与することができます。これを「法定外休日」といいます。
法定外休日における労働に対しては,上記の休日割増賃金は発生しませんが,その法定外休日の労働が時間外労働に該当する場合には,基礎賃金の25パーセント増し以上の割増賃金(残業代)を支払う必要があります。
※一定の大企業については,月60時間を超える時間外労働に対して,基礎賃金の50パーセント増し以上の割増賃金を支払わなければならないとされています(2023年4月1日から中小企業にも適用されます。)。
また,休日は,法定休日であれ法定外休日であれ,労働義務が免除されている日ですから,所定賃金がカバーする労働ではありません。
そのため,休日に出勤した場合には,割増賃金だけではなく,その日の分の基礎賃金に相当する金額の賃金も支払われる必要があります。
つまり,法定休日であれば基礎賃金の135パーセント,法定外休日が時間外労働に該当する場合であれば125パーセント(または150パーセント)の賃金が支払われなければならないということです。
そこで問題となるのは,休日の振替がされた場合にも,これらの休日割増賃金等が発生するのかという点です。
休日の振替には,休日出勤する前にあらかじめ所定休日ではない日を振替休日に指定しておくという事前の振替と,休日出勤した後に所定休日ではない日を代休として付与するという事後の振替があります。
これら休日振替がなされている場合には,休日出勤をしたとはいえ,代わりの休日は付与されています。そこで,その場合にも割増賃金等が発生するのかが問題となってくるのです。
>> 休日の振替とは?
出勤日が法定休日であった場合
前記のとおり,出勤日が法定休日であった場合には,休日労働に対する割増賃金+1日分の基礎賃金相当額の賃金(基礎賃金の135パーセント)が支払われるのが原則です。
事前の振替がされている場合
休日の事前の振替が適法に行われると,出勤すべき法定休日は労働日に変更され,それに代わって,あらかじめ指定された振替休日が法定休日ということになります。
したがって,出勤した日(当初の法定休日)は通常の労働日ということになりますので,そこでの労働は休日労働ではないということになり,休日手当も発生しないことになります。
また,事前の振替によって労働日と休日が入れ替わっているので, 出勤した日(当初の法定休日)の労働も所定賃金の範囲内となり,1日分の基礎賃金相当額の賃金も別途発生することはないということになります。
したがって,事前の振替がなされた場合の割増賃金等の支払いはなくなる(0パーセント)ということになります。
ただし,法定休日が別日に振り替えられる結果,週40時間以内という労働時間制限を超える時間数も多くなり,時間外労働が増加することはあり得るでしょう。
また,事前の振替をしたからといって週休制の原則を変えることはできません。
したがって,振替の結果,1週1回(または4週4回)の法定休日がなくなってしまう場合には,それではどの日を法定休日として特定すべきかという別の問題も生じてくる可能性があります。
事後の振替がされている場合
休日の事後の振替は,事前の振替と異なり,所定休日を労働日に変更するという効果はありません。単に,代休を付与するにすぎません。
したがって,事後の振替がされたとしても,法定休日に出勤した場合には,その労働は休日労働であり,休日割増賃金+1日分の賃金(基礎賃金の135パーセント)が発生することになります。
ただし,休日出勤後の代休は労働をしないわけですから,その日の分の賃金は控除されます(-100パーセント)。
実務上は,いったん135パーセントの賃金を発生させ,その後100パーセントを控除するという経理処理を省略するために,事後の振替の場合には,休日出勤日に135-100=35パーセント分だけ支給するという精算的な経理処理が行われることが少なくありません。
ただし,いったんは発生している135パーセントの賃金を控除するのですから,賃金全額払いの原則に反するおそれもあります。
そこで,上記のような精算的経理処理をするためには,就業規則等にその旨が定められていることが必要です。
法定休日労働をしたこととその時間数
前記のとおり,出勤日が法定外休日であった場合には,休日割増賃金は発生しませんが,その日の基礎賃金相当額の賃金(基礎賃金の100パーセント)の支払いは必要です。
また,時間外労働に当たるのであれば,さらに残業代の支払い(基礎賃金の25パーセントまたは一定の場合には50パーセント)も必要です。
事前の振替がされている場合
休日の事前の振替がされている場合には,出勤する法定外休日は労働日に変更されるので,その日の分の基礎賃金相当額(100パーセント)の支払いはなくなります。
もっとも,時間外労働に当たる場合には,所定賃金の範囲外ですから,その日の分の賃金と残業代(基礎賃金の125または150パーセント)の支払いは,結局必要となります。
事後の振替がされている場合
休日の事後の振替がされていても,その日の基礎賃金相当額の賃金(基礎賃金の100パーセント)の支払いは必要です。
また,時間外労働に当たるのであれば,その部分については,残業代の支払い(基礎賃金の125パーセントまたは一定の場合には150パーセント)が必要です。
ただし,後に代休を付与されているため,休日出勤日の基礎賃金相当額の賃金(100パーセント)部分については,前記の清算的経理処理がなされる場合があります。
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