未払い給料・給与など所定賃金の請求では何を主張立証すればよいのか?
未払いの給料・給与・基本給等の所定賃金(所定内賃金)を使用者に対して請求する場合には,労働者の側で,使用者との間で労働契約(雇用契約)を締結したことおよび所定の労働の提供をしたこと(終了したこと)を要件事実として主張・立証する必要があります。実務上は,労働契約の内容(所定賃金の金額・給料の締日と支払日)も主張・立証するのが通常でしょう。
ここでは,未払い給料・給与請求では何を主張立証すればよいのか(要件事実)について,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。
未払い給料・給与など所定賃金の請求では何を主張立証すればよいのか?
(著者:弁護士 志賀 貴 )
※東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所における未払い残業代等請求のお取り扱いについては,未払い残業代等請求の経験豊富な弁護士をお探しの方へをご覧ください。
未払い所定賃金請求の要件事実
裁判(労働審判や訴訟)では,各当事者が法律要件に該当する具体的な事実を主張し,それを証拠によって裏付ける(立証する)ことが必要です。裁判所はそれをもとに判決等の判断を下すことになります。
この法律要件に該当する具体的な事実のことを「要件事実」と呼んでいます。
未払い給料・給与等所定賃金を請求する場合も,特に裁判で請求する場合であれば,労働者の側で所定賃金請求権の発生原因となる要件事実を主張立証しなければなりません。
給料・給与など所定賃金請求の発生原因となる要件事実は,以下のとおりです。
- 使用者との間で労働契約を締結したこと
- 所定の労働を提供したこと(労働の提供が終了したこと)
ご自分に未払い給料・給与等を請求する権利があるということを明らかにするためには,最低でも,上記の要件事実の主張・立証が必要となってきます。
理論上は上記の要件事実を主張・立証すれば所定賃金請求権は発生することになりますが,実務においては,以下の事実も主張するのが通常でしょう。
- 労働契約の内容(所定賃金額・賃金締日・支払日)
- 給料・給与等の支払日が到来したこと
- 未払い給料・給与等の金額
労働契約の締結とその内容
未払い給料・給与等所定賃金は,労働者と使用者との間の労働契約(雇用契約)に基づいて発生するものです。
したがって,未払い給料・給与等を請求するためには,使用者との間で労働契約を締結したことを主張・立証する必要があります。
労働契約の締結は,どの労働契約なのかを特定するために,当事者・契約締結日も主張します。
例えば,「A(労働者)は,B(使用者)との間で,●年●月●日,次の内容で労働契約を締結した。」などと主張するということです。
前記のとおり,要件事実としては上記労働契約締結を主張・立証すれば足りますが,実務上は,「次の内容」として,労働契約の内容についても主張・立証しておくのが通常でしょう。
労働契約の内容については,すべてを主張・立証する必要はありませんが,未払い給与・給料等請求に必要なものは主張・立証しておくべきです。具体的には,以下のものは主張・立証するのが通常です。
- 所定賃金の金額
- 所定賃金の締日と支払日
>> 労働契約とは?
所定賃金の金額
所定賃金の金額は,当然主張・立証が必要です。この所定賃金額とは,例えば月給制であれば,毎月いくら支払うという契約・約束になっていたのかということです。
基本給のほかに各種手当などが所定賃金として支払われるという約束であったのであれば,その内訳やそれぞれの金額も明示しておくべきです。
所定賃金の締日と支払日
所定賃金の金額のほか,所定賃金の締日と支払日も主張・立証しておく必要があるでしょう。例えば,月給制であれば,毎月何日締めで何日払いなのかを主張・立証するということです。
立証の方法
労働契約の締結やその内容については,労働契約書または就業規則によって立証することになります。給与明細書等で賃金額などを立証する場合もあるでしょう。
所定の労務を提供したこと(労務の終了)
給料・給与などの所定賃金は,労働契約で定められた所定の労働の提供を終了していなければ支払いを請求することができません(有給休暇はべつです。)。
したがって,未払い給料・給与等を請求するためには,所定労働を提供したこと(終了したこと)を主張・立証する必要があります。
ただし,所定賃金請求の場合には,割増賃金請求の場合のように1日ごとに出退勤時刻を主張するというようなことはせず,●年●月●日から●年●月●日まで労働を提供した,という程度の主張をするのが通常です。
労務を提供したことは,可能であれば,タイムカードや出勤簿などで立証することになります。ただし,相手方が出勤したことは争わないことも多いでしょう。
所定賃金の支払日が到来したことの主張の要否
支払日が到来していなければ,給料・給与等を請求することはできませんが,前記のとおり,労働契約の締結・内容,労務の提供を終了したことを主張立証できれば,給料・給与等の請求権は発生します。
つまり,支払日が到来したことを労働者側で主張する必要はなく,使用者側が支払日が到来していないことを期限の抗弁として主張・立証する必要があります。
したがって厳密に主張立証する必要はないのですが,労働者側で所定賃金の締日と支払日を主張・立証しておけば,支払日がすでに到来していることは主張したことになるでしょう。
未払い所定賃金の金額の主張の要否
未払いとなっている給料・給与等所定賃金の金額も,理論上は要件事実ではありません。
ただし,いくら請求するのかは当然明示しなければなりませんし,請求している金額が全額なのか,それとも一部の金額なのかも明示しなければなりません。
したがって,要件事実ではないといっても,結局は,未払い給料・給与等の金額は主張することになるのが通常です。
所定賃金の支払いがされていないことの主張の要否
給料・給与等の所定賃金が「支払われていないこと」は,要件事実ではありません。労働者の側で立証する必要はありません。そもそも,「無いこと」を主張するのは困難が伴うからです。
むしろ,給料・給与等を「支払ったこと」を,使用者側で,弁済の抗弁として主張・立証しなければのです。
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