労災保険に関するよくあるご質問・Q&A
※現在,業務過多により労働災害事件についてはご相談・ご依頼の受任を中止しております。悪しからずご了承ください。
労働者が労働災害によって傷病・死亡した場合,労働者は労災補償を受けることができます。そして,この労災補償を担保するための公的制度として,労働保険制度が用意されています。
このページでは,労災保険ついてのよくあるご質問について,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所がQ&A形式でお答えいたします。
労災保険に関するよくあるご質問
(著者:弁護士 志賀 貴 )
労災事故による損害賠償のご相談・ご依頼については,労働災害による損害賠償請求の法律相談・ご依頼のページをご覧ください。
労働保険とは?
- Q. 労働保険とは何ですか?
- A. 労働保険とは,労働者災害補償保険(労災保険)と雇用保険の総称です。両者は別個の保険制度ですが,保険料納付に関しては一体のものとして扱われています。
- Q. 労災保険とは何ですか?
- A. 労災保険とは,労働者災害補償保険の略称です。労働者災害補償保険とは,労働者災害補償保険法に基づき,「業務上の事由又は通勤による労働者の負傷,疾病,障害,死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため,必要な保険給付を行い,あわせて,業務上の事由又は通勤により負傷し,又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進,当該労働者及びその遺族の援護,労働者の安全及び衛生の確保等を図り,もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする」公的保険制度のことをいいます。
- Q. 労災補償制度とはどのような制度ですか?
- A. 労災補償制度とは,労働者が労働災害を被った場合に,使用者がその労働災害を補償しなければならないとする制度のことをいいます(労働基準法第8章)。
- Q. 労災補償と労災保険はどのような関係にあるのでしょうか?
- A. 労災補償は無過失責任とされていますが,使用者に支払い能力がなければ実効性がありません。労働保険制度は,使用者の支払い能力が不足している場合でも,労働者が最低限度の労災補償を受けられるようにするために設けられた制度です。したがって,労災保険は労災補償の実効性を担保するための制度といえます。
- Q. 労災保険はどのように運用されているのでしょうか?
- A. 労災保険は,政府が管掌し,労働者を使用する事業者を対象として,その事業者から保険料を徴収して運用されています。労災保険に加入している事業者に使用される労働者は,労働災害を被った場合,保険給付を請求することができます。
- Q. 労災保険と健康保険とはどのような関係にあるのですか?
- A. 労災保険の対象となる労働災害については,健康保険を利用できないものとされています。ただし,労働災害について健康保険を利用してしまった場合でも,後に労災保険への切替え等の手続をとることができます。
労災保険の適用事業
- Q. 労災保険はどのような事業者に適用されるのですか?
- A. 労災保険は,労働者を使用するすべての事業者に対して適用されます。
- Q. 労働者が1人しかいない場合でも労災保険の適用事業者となるのですか?
- A. はい。労働者が1人しかいない場合でも,労働者を使用している以上,その事業者は労災保険の適用対象となります。
- Q. 労災保険の適用対象となる事業とは何ですか?
- A. 労災保険の適用対象となる事業とは,1つの経営組織として独立性をもった形態のことをいい,一定の場所において一定の組織のもとに有機的に相関連して行われる一体の作業と認められるかどうかを基準として判断されると解されています(昭和23年9月11日基発第36号)。
- Q. 労災保険が適用されない事業はあるのでしょうか?
- A. はい。国の直営事業,非現業官公署,船員保険の被保険者には,労災保険が適用されない事業とされています。ただし,これらについても,国家公務員災害補償法,地方公務員災害補償法,船員保険法によって,労災保険と同等の保障が与えられています。
- Q. 労災保険に加入しなくてもよい事業はあるのでしょうか?
- A. はい。労災保険の非適用事業である国の直営事業,非現業官公署,船員保険の被保険者以外は労災保険の適用事業者となりますが,個人経営の農林水産事業者については,労災保険に加入するかどうかを事業者が任意に選択することができるとされています。
労災保険の適用労働者
- Q. 労災保険における労働者とはどのような労働者のことをいうのですか?
- A. 労災保険における労働者とは,労働基準法における労働者と同一であると解されています。
- Q. 労働基準法上の労働者とはどのような労働者のことをいうのですか?
- A. 労働基準法上の労働者とは,職業の種類を問わず,事業または事務所に使用される者で,賃金を支払われる者のことをいいます(労働基準法9条)。
- Q. 労災保険・労基法上の労働者であるかどうかはどのように判断するのでしょうか?
- A. 労災保険および労働基準法上の労働者であるかどうかは,使用者からの指揮命令の有無,拘束性の有無,代替性の有無,労働の結果による支給額の較差の有無,残業代の支払いの有無,機材等の負担の有無などを総合的に考慮して,使用者に使用されているといえるかどうか,労働の対価としての賃金が支払われているかどうかから判断することになります。
- Q. 会社・法人の役員にも労災保険が適用されるのですか?
- A. いいえ。会社・法人の役員は事業者との題で委任関係にあり,雇用関係にあるとはいえないので,労災保険は適用されません。
- Q. パート・アルバイト従業員にも労災保険が適用されるのですか?
- A. はい。パート・アルバイトであっても,事業者に使用されている労働者であることには変わりありませんので,労災保険の適用対象となります。
- Q. 外国人従業員にも労災保険が適用されるのですか??
- A. はい。労災保険は国内事業者を対象として適用される制度であって,労働者の国籍を問わないものですので,外国人従業員にも労災保険は適用されます。
- Q. 個人事業者も労災保険に加入できるのですか?
- A. 個人事業者も事業者ですから,原則として,労災保険の補償の対象にはなりません。ただし,一定の中小事業主や労働者を雇用しない自営業者については,特別加入制度によって労災保険に加入することができるとされています。
労災保険の給付
- Q. 労災保険給付はどのような場合に支払われるのですか?
- A. 労災保険給付は,「労働者の業務上の負傷,疾病,障害又は死亡(業務災害)」ないしは「労働者の通勤による負傷,疾病,障害又は死亡(通勤災害)」があった場合に支払われます。
- Q. 業務災害とは何ですか?
- A. 業務災害とは,業務または業務行為を含めて,労働者が労働契約に基づいて事業主の支配管理下にある状態に伴う危険が現実化したものと経験則上認められる負傷,疾病,障害又は死亡を意味します。
- Q. 通勤途上に災害に遭った場合,業務災害となりますか?
- A. いいえ。通勤途上の災害は業務災害にはなりません。ただし,通勤途上の災害は後記の通勤災害として労災保険給付の対象となることがあります。
- Q. 通勤災害とは何ですか?
- A. 通勤災害とは,自宅などの住居と会社など就業場所の間などの往復で,社会通念上合理的な経路および方法により行われるもののうち,業務の性質を有する移動行為でないものによって発生した負傷,疾病,障害又は死亡のことをいいます。
- Q. 労災保険ではどのような給付を受けることができるのですか?
- A. 業務災害については,療養補償給付,休業補償給付,傷害補償給付,遺族補償給付,葬祭料,傷害補償年金,介護補償給付があります。通勤災害については,療養給付,休業給付,傷害給付,遺族給付,葬祭給付,傷害年金,介護給付があります。
労災保険の請求手続
- Q. 労災保険給付を受けるためにはどのような手続をとればよいのでしょうか?
- A. 労災保険給付を受けるためには,被災労働者(またはその遺族)が,労働基準監督署長に対して保険給付の請求書を提出して労災保険給付請求(申請)をする必要があります。
- Q. 会社・事業主側が労働災害を認めてくれなければ,労災保険給付を受けられないのでしょうか?
- A. いいえ。会社・事業主が労働災害を認めてくれない場合でも,事業主が労災を認めてくれない旨を説明することで労災保険給付申請をし,労災保険給付を受けることが可能です。
- Q. 労災保険の請求はいつまででも可能ですか?
- A. いいえ。労災保険給付請求権にも消滅時効があります。療養補償給付については療養のための費用を支払った日から,休業補償給付については業務上の負傷・疾病の療養を理由に労働することができないために賃金の支払いを受けることができなかった日から,障害補償については症状固定日から,それぞれ2年で時効により請求権が消滅しますので,その期間内に請求をする必要があります。ただし,すでに保険給付の決定がされている場合には,決定日から5年が時効期間となります。
- Q. 労働基準監督署で労災が認められなかった場合,裁判所に不服を申し立てることはできますか?
- A. いいえ。労働基準監督署長で労災が認められなかった場合,まずは都道府県労働局内の労災保険審査官に審査請求をし,その審査決定でも認められなければ,厚生労働省本省内の労働保険審査会に再審査請求をしなければなりません。最新再請求でも認められなかった場合にはじめて,裁判所に対して,不服を申し立てるための行政訴訟を提起することができるとされています。
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代表弁護士 志賀 貴
日本弁護士連合会:登録番号35945(旧60期)
所属会:第一東京弁護士本部および多摩支部
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