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労働者の労働問題の基礎知識

退職金・退職手当とは?

退職金(退職手当)とは,退職した労働者等に対して支払われる給付のことをいいます。退職金は,退職をすれば当然に発生するものではなく,労働契約において支給額または支給条件が明確に定められており,賃金に該当すると認められる場合に限り,請求することが可能となります。ただし,労働契約において明確な定めがない場合でも,一定額の退職金を支払うこと等が労使慣行になっていると認められる場合には,退職金請求が認められることがあります。

ここでは,退職金・退職手当の法的な意味について,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。

なお,労働事件・雇用問題に関するご相談は,弁護士による労働事件・雇用問題の法律相談をご覧ください。

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退職金・退職手当とは?

退職金とは,退職した労働者等に対して支払われる金銭のことをいいます。退職手当・退職慰労金などと呼ばれることがあります。

我が国の場合,終身雇用が前提とされていたこともあって,退職金は退職後の生活設計の基盤として重要な意味を有していました。

そのため,労働者が退職するに際して,この退職金が支払われることが少なくありませんでした(近時は退職金制度のない企業も増えてきているようです。)。

そして,退職金の支払いを確保するためのために,中小企業退職金共済等の各種退職金共済制度等が用意されています。

この退職金の支払い方法についてはさまざまですが,一時金として支払われることが多いでしょう。ただし,年金として支払うという方法も許されています。

もっとも,退職金は通常賃金よりも大幅に高額となるのが普通です。そのため,労働者が退職するにあたって,この退職金の支払いについて労使間で紛争となるケースが少なくありません。

退職金・退職手当の法的性質

この退職金・退職手当は,法律的にはどういった意味を持っているのでしょうか?

この退職金・退職手当には,複数の性質があると考えられています。

1つは,会社からの恩給的な給付という性質です。つまり,退職金というものは,それまで働いてくれたことに対するお礼や慰労の意味で支払われるものであるという性質です。

ただし,退職金には,賃金としての性質を含む場合もあると言われます。つまり,退職金は,単なる恩給ではなく,それまで勤め上げたことに対する対価としての意味を持つと考えるのです。

そのため,退職金・退職手当は「賃金の後払い的性格」を有していると言われることもあります。

ただし,すべての退職金が恩給的給付の性質と賃金の後払い的性質を有しているというわけではありません。どのような性質を有しているのかは,個別の事情によって異なってきます。

専ら恩給的給付の性質しか有していないという場合もあるでしょうし,逆に完全に賃金としての性質を有しているといえる場合もあるでしょう。

>> 退職金は賃金に該当するか?

退職金・退職手当を請求できる場合

退職金(退職手当)は,給料・給与や残業代などの割増賃金と異なり,労働をすれば当然に発生するというものではありません。退職をしたら必ず退職金を請求できるというわけではないのです。

退職金を請求できるのは,あくまで,労働契約において,退職金・退職手当を支払うという約束がなされている場合に限られます。

したがって,労働契約や就業規則で退職金・退職手当を支払うという定めが無い場合には,たとえ退職金・退職手当が支払われないとしても未払い・不払いの問題は起きませんし,無論その支払いを請求することはできないということになります。

また,労働契約や就業規則において退職金を支給する旨の規定がある場合であっても,退職金の支給額や支給条件が明確にされていない場合には,必ずしも退職金を請求できるとは限りません。

支給額や支給条件が不明確である場合には,使用者が必ずしも退職金を支払うことを約束しているとはいえないからです。

そうすると,未払い・不払いの退職金・退職手当を請求することができる場合とは,退職金・退職手当の支払金額や支給条件等が労働契約や就業規則などにおいて具体的に規定されているため,賃金に該当するといえる場合,使用者に支払義務が認められる場合に限られるということになるでしょう。

もっとも,前記のとおり,退職金には,賞与・ボーナスと異なり,賃金の後払い的性格があります。そのため,賞与・ボーナスに比べれば,賃金として扱われることが多いとはいえます。

いずれにしても,退職金を請求できるかどうかは,その退職金が使用者に支払義務があるといえるかどうかにかかっています。

より具体的にいえば,労働契約等において支給額や支給条件が明確に定められているかどうかによるということです。

なお,退職金が賃金に当たるという場合には,通常の賃金と同様に,法的な支払い義務が発生するだけでなく,労働基準法で定められた厳格な支払い原則に従った支払いが必要となってきます。

>> 退職金を請求できるのはどのような場合か?

退職金に関する規定がある場合

上記のとおり,労働者が退職金を請求できるのは,具体的な支給額または支給条件等が就業規則等に規定されている必要があります。

退職金も労働者の退職後の生活設計の基盤となる重要性を有していることからすれば,使用者側は,退職金制度を設ける以上,具体的な支給額等を定めておくのが望ましいことは言うまでもありません。

そこで,労働基準法89条は,就業規則の記載事項として,「退職手当の定めをする場合においては,適用される労働者の範囲,退職手当の決定,計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項」を記載する必要があるものとしています。

上記記載がなされていれば,具体的な支給額または支給条件が明確になり,使用者に当該退職金の支払義務が認められることになるでしょう。

>> 就業規則の要件とは?

明確な退職金規程が無い場合

前記のとおり,労働基準法89条は退職金規程を明確に定めることを求めていますが,実際には,明確な退職金の規定がなされていない場合が少なからずあります。

退職金を請求できるのは,労働契約や就業規則において,退職金の支給額や支給条件が明確に定められている場合です。そうでない場合には,退職金を請求できないのが原則です。

もっとも,例外的に,労働契約等に定めがない場合であっても,退職金の請求が認められる場合があります。それは,退職金を支払う旨の「労働慣行」があったと言える場合です。

退職金を支払う旨の労働慣行があった場合とは,要するに,退職金規程はない(または不明確な定めしかない)場合であるものの,退職した労働者に対して実際には退職金が支払うのが慣例となっていたという場合です。

裁判例においても,退職金を支払う労働慣行があったとして,その労働慣行は労働契約の内容となっているとし,労働者による退職金請求を認めたものがあります(東京地判平成7年6月12日,東京地判昭和63年2月24日,東京地判昭和51年12月22日等)。

したがって,明確な退職金規程がない場合であっても,労使慣行があると認められる場合であれば,退職金を請求できる場合があります。

ただし,「慣行」となっているほど常態化していることが必要となってきますので,単に,誰か一部の退職者のみに退職金が支払われているという程度では難しいでしょう。

>> 退職金規程が無い場合でも退職金を請求できるのか?

退職金・退職手当を請求できる期間

前記のとおり,退職金の支払いが労働契約の内容となっている場合には,退職金の支払いを請求できます。

もっとも,退職金の請求権も債権です。したがって,退職金の支給日から一定期間が経過すると,時効によって消滅します。

賃金の請求権は支給日から3年で時効により消滅するとされていますが,退職金の請求権の場合には,支給日から5年で時効により消滅するとされています。

>> 未払い退職金請求ができる期間はいつまでか?(消滅時効)

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