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退職金・退職手当の請求

未払い退職金請求ではどのような証拠が必要となるか?

退職金・退職手当を請求するためには,①使用者との間で労働契約を締結したこと,②退職金を支払う旨の労働契約・合意があること,③退職金の支給基準が定められていること,④労働者が退職したこと,⑤退職金の支給基準を満たしていること,を主張・立証しなければなりません。労働契約の締結については労働契約書や雇用契約書を証拠とするのが通常です。退職金支給の合意や支給条件の定めについては,それらを定める労働契約書・就業規則・労働協約によって立証します。退職の事実については離職票などを証拠とすることになるでしょう。退職金の支給条件を充たしているかどうかはその支給条件の内容によります。

ここでは,未払い退職金請求ではどのような証拠が必要となるのかについて,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。

なお,労働事件・雇用問題に関するご相談は,弁護士による労働事件・雇用問題の法律相談をご覧ください。

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未払い退職金請求における主張と立証

退職金・退職手当は,定期的に支払われる給料などと異なり,必ず支払われなければならないものではありません。

退職金を請求できるのは,労働契約・就業規則(退職金規程など)・労働協約に退職金を支払う旨の定めがある場合,または,退職金を支払う労使慣行が存在する場合に限られます。

しかも,ただ退職金を支払う旨の労働契約等があるというだけでは足りず,その労働契約等に具体的な退職金の支給基準が定められており,賃金に該当するといえる場合でなければなりません。

賃金に当たらない場合,その退職金は,使用者から労働者に対する恩給的なものであるため,仮に支払いがなされないとしても,それは使用者側の裁量の範囲内であり,支払を請求することはできないのです。

そして,未払い退職金を請求できる場合であっても,労働者の側で,以下の要件事実を主張・立証しなければなりません。

  • 使用者との間で労働契約を締結したこと
  • 退職金を支払う旨の労働契約(または労使慣行)があること
  • 退職金の支給基準が定められていること
  • 労働者が退職したこと
  • 退職金の支給基準を満たしていること

交渉をして解決することが望ましいことは言うまでもありませんが,話し合いがつかなければ,最終的には訴訟によって請求する必要がありますから,交渉段階から,あらかじめ訴訟になることも見越しておく必要があります。

訴訟になることを見越しておくというのは,つまり,上記の要件事実を立証することができるのか,その立証のための証拠をどれだけ用意できるのかどうかを検討しておくということです。

なお,退職金が支払われていないことを,労働者の側で立証する必要はありません。むしろ,退職金を支払ったことを,使用者側で主張・立証しなければならないからです。

>> 退職金請求をする場合には何を主張・立証すればよいのか?

労働契約の締結の立証

前記のとおり,退職金請求においては,当該使用者との間で「労働契約を締結したこと」を主張・立証する必要があります。

労働契約書・雇用契約書によって立証するのが通常でしょう。

労働契約書や雇用契約書が無い場合には,労働条件の通知書や,労働条件を記載した書類などを証拠として用意することになります。

>> 労働契約とは?

退職金支給の合意および支給基準の定めがあることの立証

前記のとおり,退職金請求においては,当該使用者との間で「退職金を支払う旨の合意があること」および「具体的な退職金支給基準の定めがあること」を主張・立証する必要があります。

これについては,退職金を支払う旨の規定および支給基準が定められている労働契約書・雇用契約書・就業規則(退職金規程)・労働協約書・個別の合意書などを証拠として立証します。

>> 退職金を請求できるのはどのような場合か?

労使慣行(労働慣行)の立証

労働契約・就業規則・労働協約で退職金を支払う旨の定めがない場合でも,退職金を支払う旨の確立した労使慣行(労働慣行)があると言える場合には,その労働慣行に基づいて退職金請求できると解されています。

退職金を支払う旨の確立した労使慣行があるかどうかについては,以下の要件を充たしている必要があると解されています(「労働関係訴訟の実務」357頁)。

  • 過去に退職した多数の労働者が受領した退職金の額に照らして,明確な退職金支給基準が存在し,当該事件の労働者について具体的な退職金金額が特定できること
  • 上記のとおりに支払うのが,両当事者(退職金支払いに関しては特に使用者側)にとっての規範的意識(法的義務として支払わなければならないという意識)として理解されるに至っていること

上記要件からすると,まず第一に,過去に退職した労働者が退職金を受領していたことの立証が必要です。

これについては,使用者側から退職金支給に関する資料を提出してもらうのが確実ですが,使用者側が開示をしてこない場合には,過去に退職した労働者の協力を得て退職金支給の明細等を証拠とすることになります。

使用者側において両当事者にとっての規範的意識として理解されていたかどうかを立証するのは容易ではありませんが,社内の内規などで退職金の支給条件や計算方法を定めていた場合には,それを記載した書類などを証拠として提出することになります。

退職金の計算方法などについて使用者側の担当者に問い合わせた際の回答書や回答メールなどを証拠とする場合もあります。

>> 退職金規程が無い場合でも退職金を請求できるか?

労働者が退職したことの立証

前記のとおり,退職金請求においては,「退職したこと」を主張・立証する必要があります。

もっとも,退職した事実そのものを使用者側が争うことはあまりないでしょう。

仮に退職したことを争われた場合には,退職後に会社から交付された離職票などの書類を証拠として立証することになります。

なお,退職した事実そのものは争わないものの,任意の退職ではなく解雇であるというように争われることはあります。

>> 退職の種類によって退職金を請求できない場合があるか?

退職金支給基準を充たしていることの立証

前記のとおり,退職金請求においては,「退職金のしきゅ条件を充たしていること」を主張・立証する必要があります。

この退職金の支給基準や条件にはさまざまなものがあるので,一概にどのような証拠が必要であるということはできません。

ただし,一般的には,一定期間勤務していれば,その期間に応じて一定金額を支払うという取り決めが一般的だと思います。

そのような場合には,その一定期間勤務していたことを立証できればよいことになります。交付された給与明細などがあれば十分でしょう。

仮に入社時期などについて争いが生じたような場合には,健康保険証や入社時の雇用契約書などによって立証することになるでしょう。

また,逆に,一定の事由がある場合には退職金を支給しないまたは減額する旨の規定が設けられているばあいには,そのことの主張立証責任は使用者にありますが,使用者側の主張立証を崩すための主張や証拠の提出をしなければならないこともあります。

>> 退職金の不支給規程・減額規程は有効か?

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