未払い退職金を請求できる期間はいつまでか(消滅時効)?
退職金・退職手当を請求する権利も,一定の期間が経過すると,消滅時効によって消滅してしまいます。ここでは,未払い退職金・退職手当を請求できるのはいつまでか(消滅時効)について考えます。
未払い退職金の内容証明郵便による請求書の書き方
(著者:弁護士 志賀 貴 )
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消滅時効
ある権利について,その権利が無いかのような状態が永く継続した場合,それが後にいきなり覆されると,その権利がないという状態を信頼して取引などをした人に不測の損害を与えてしまうおそれがあります。
また,権利を行使できたにもかかわらず,それを行使しないままに放置してきた人を過剰に保護する必要もありません。いわゆる「権利の上に眠る者は保護せず」という法格言もあります。
そこで,権利が無いという事実状態が一定期間継続した場合には,その事実状態どおり,法律上もその権利がなくなってしまうという制度のことを「消滅時効」といいます。
債権も,時効によって消滅します。そして,使用者に対して退職金・退職手当の支払いを請求する権利も債権ですから,消滅時効の適用があります。
したがって,退職金請求権も,一定の期間が経過すると無くなってしまいます。つまり,未払いの退職金・退職手当を請求することができるのは,この消滅時効が成立するまでという期間制限があるのです。
>> 消滅時効とは?
退職金請求権の消滅時効期間
一般的な債権の時効期間は10年とされています。しかし,退職金請求権については,一般的な債権よりも消滅時効期間が短くされています。これを「短期消滅時効」といいます。
残業代などの賃金の請求権の消滅時効期間は「3年」です。
もっとも,退職金請求権は,賃金に当たる場合であっても,他の賃金と異なり,その退職金請求権が発生した時から「5年」で消滅時効にかかるものとされています。他の賃金請求権よりも期間が長いのです。
したがって,退職金・退職手当については,所定の支払日から5年以内に支払いを請求しなければ消滅時効にかかってしまい,その後は原則としてそれを請求することができなくなってしまうので,注意が必要です。
ただし,消滅時効には,その期間の進行を止めるための方策として「時効の更新」という制度が設けられています。
したがって,退職金請求権の消滅時効を中断させることができれば,その消滅時効はいったんリセットされます。そのため,未払い退職金を請求する場合には,この退職金・退職手当の消滅時効期間に注意をしておかなければなりません。
【関連】 賃金請求権の消滅時効
消滅時効の中断
消滅時効を更新させる方法にはいくつかのものがありますが未払い退職金請求の場合には,「請求」をすることによって時効中断させるというのが一般的でしょう。
ここでいう「請求」とは,単に,使用者に対して支払いを請求するというだけの意味ではなく,裁判によって請求するということ,つまりは,退職金請求の労働審判や訴訟を提起するということです。
もっとも,訴訟提起などをするためには準備期間が必要です。準備しているうちに時効がどんどんと進行してしまうのは困ります。
そこで,仮の時効中断措置として「催告」をしておくことになります。「催告」をすると,時効期間は仮に停止されます。
ただし,この仮の中断の効果は半年しかありません。その半年以内に準備をして,話をつけるなり,訴訟等を提起するなりをしていくことになります。
この「催告」は,裁判外で請求することで足ります。
ただし,後で催告をしたか否かについて言った言わないの紛争にならないように,使用者に対して,配達証明付きの内容証明郵便で請求書を送っておくのが通常のやり方です。
【関連】 賃金請求権の消滅時効の更新
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