出来高払制の場合でも残業代等を請求できるか?
賃金の支払い方法の1つに,歩合給などの出来高払制がありますが,この場合,残業代等の割増賃金が発生するのかということが問題となってきます。
ここでは,この出来高払制の場合でも残業代等を請求できるのかについて考えます。
出来高払制の場合でも残業代等を請求できるか?
(著者:弁護士 志賀 貴 )
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出来高払制の場合の残業代請求
「出来高払制」とは,労働者が製造した物の量や売上などに応じて一定の比率で賃金を支払う制度のことをいいます。歩合給などが典型的でしょう。
出来高払いの場合には,労働時間というよりも,その労働によってどのような成果を上げたのかということが着目されますから,時間外労働などの労働時間の考え方にはなじまないようにも思えます。
しかし,現実には,労働者は,一定の時間を労働の提供に充てているのです。使用者が決めた一定の基準の成果に満たなかったとしても,労務を提供したということ自体には変わりありません。
それにもかかわらず,歩合給であるから,出来高払制であるからとして,その労務の提供に対して何らの対価も支払わないというのは,あまりに労働者の権利を害します。
また,出来高払制は,賃金カットの潜脱手段として用いられることが少なくないため,労働者の生活の安定の確保の見地から,完全出来高払いは禁止されており,一定の保障給(一般的には休業手当相当額程度)を支払わなければならないとされています。
この保障給の趣旨から考えても,法は,仮に出来高払制の場合であっても,労働者の労働に対しては最低限度の対価を保障すべきということを基本原則としているといえるでしょう。
そこで,出来高払制の場合であっても,時間外労働をすればこれに対する割増賃金(残業手当・残業代)が,休日労働をすればこれに対する割増賃金(休日手当)が,深夜労働をすればこれに対する割増賃金(深夜手当)が,それぞれ支払われなければならないとされています。
したがって,仮に使用者・会社において出来高払制が採用されていたとしても,残業代等の割増賃金を請求することは可能なのです。
割増賃金の基礎賃金の算定
前記のとおり,出来高払制の場合であっても,労働者は使用者に対して,時間外労働などをした場合には,やはり残業代などの割増賃金を請求することができます。
その場合,割増賃金の算定の基礎とする賃金(基礎賃金)はいくらになるのかということが問題となってきます。
出来高払制の場合,特に完全出来高払制であったような場合には,何をもとに基礎賃金を算出すればよいのかどうかが不明確だからです。
この点については,労働基準法施行規則19条6号に規定があります。
同号によれば,出来高払制の場合には,「その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には,賃金締切期間,以下同じ)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における,総労働時間数で除した金額」を基礎賃金とすると規定されています。
すなわち,一定の期間を区切って出来高払給が支払われた場合には,その支給額をその期間の総労働時間数で割った金額が基礎賃金になるということです。
たとえば,月給制の出来高払制として30万円が支払われ,その月の総労働時間が200時間であったとすれば,【 300,000÷200=1,500 】により,1500円が基礎賃金となるということです。
出来高払制でない固定給のような通常の場合の割増賃金の基礎賃金と異なり,基礎賃金計算における労働時間が,1年間の平均所定労働時間数等ではなく,実際の総労働時間とされていることには注意が必要でしょう。
出来高払制の保障給との関係
なお,出来高払制の場合には,最低限度の支給額として,使用者は労働者に対して,保障給を支払わなければならないとされています。
もっとも,この保障給はあくまで支給額の最低限度を画するというものにすぎません。したがって,この保障給が,出来高払いの場合の残業代等の割増賃金計算の基礎賃金となるわけではありません。
あくまで保障給と割増賃金計算の基礎賃金は,別物であるということです。
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