企画業務型裁量労働制とは?
裁量労働みなし労働時間制には,専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制とがあります。
企画業務型裁量労働制とは,事業の運営に関する事項についての企画,立案,調査及び分析の業務であつて,当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため,当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務について,その業務を行う労働者の労働時間を,あらかじめ定められた労働時間であるとみなすという制度です。
ここでは,企画職裁量労働制とは何かについて,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。
企画業務型裁量労働制とは?
(著者:弁護士 志賀 貴 )
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企画業務型裁量労働制とは?
労働基準法 第38条の4 第1項
賃金,労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し,事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)が設置された事業場において,当該委員会がその委員の五分の四以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし,かつ,使用者が,厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁に届け出た場合において,第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者を当該事業場における第一号に掲げる業務に就かせたときは,当該労働者は,厚生労働省令で定めるところにより,第三号に掲げる時間労働したものとみなす。
① 事業の運営に関する事項についての企画,立案,調査及び分析の業務であつて,当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため,当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務(以下この条において「対象業務」という。)
② 対象業務を適切に遂行するための知識,経験等を有する労働者であつて,当該対象業務に就かせたときは当該決議で定める時間労働したものとみなされることとなるものの範囲
③ 対象業務に従事する前号に掲げる労働者の範囲に属する労働者の労働時間として算定される時間
④ 対象業務に従事する第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
⑤ 対象業務に従事する第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者からの苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
⑥ 使用者は,この項の規定により第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者を対象業務に就かせたときは第三号に掲げる時間労働したものとみなすことについて当該労働者の同意を得なければならないこと及び当該同意をしなかつた当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。
⑦ 前各号に掲げるもののほか,厚生労働省令で定める事項
労働基準法には,「みなし労働時間制」という制度が規定されています。
みなし労働時間制とは,労働時間が算定し難い場合や労働時間を労働者に委ねる必要がある場合など一定の場合に限り,実際の実労働時間にかかわらず,あらかじめ定められた労働時間数働いたものとみなすという制度のことです。
このみなし労働時間制には,「事業場外みなし労働時間制」と「裁量労働みなし労働時間制(裁量労働制)」という2つの種類があります。
さらに,このうちの裁量労働みなし労働時間制には,「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」とがあります。
このうち,企画職裁量労働制とは,事業の運営に関する事項についての企画,立案,調査及び分析の業務であつて,当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため,当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務について,その業務を行う労働者の労働時間を,あらかじめ労使委員会の決議で定められた労働時間であるとみなすという制度です。
企画業務の場合も,専門業務と同じように,労働の量よりも質が問題となりますし,また,事業運営に関する事項の企画や分析等の業務は,どのように業務を遂行していくのかについて,使用者から具体的指示を出すことが難しく,企画業務の担当者の裁量に委ねざるを得ない場合があります。
そこで,そのような企画業務の特殊性を制度的に反映したものが,この企画業務型裁量労働制なのです。
企画業務型裁量労働制の効果
具体的に,企画業務型裁量労働制を利用するとどのような効果が生じるのかというと,前記のとおり,労働者の労働時間数が,実労働時間にかかわらず,あらかじめ労使委員会の決議によって定められた労働時間数であるとみなされることになります。
たとえば,労使委員会の決議によって定められた労働時間数が法定労働時間以内である8時間であったとすると,労働者は,ある特定の日に実際は8時間を超えて働いたとしてしても,その日の労働時間も8時間であったものとみなされるということです。
もちろん,逆に,ある特定の日の実労働時間が1時間であったとしても,労働時間数は8時間とみなされることになります。
ともかく,労働者の実労働時間にかかわらず,あらかじめ労使協定等で決めておいた時間数働いたものとみなしてしまうという制度なのです。
企画業務型裁量労働制の要件
企画業務型裁量労働制といっても,どのような企画職でもこの裁量労働制の対象となるというわけではありません。企画職裁量労働制の対象となる職種は,厳格に限定されています。
企画業務型裁量労働制は,労働時間数にかかわらず,その労働を一定時間労働したものとみなすという制度ですから,労働者にとって不利益なことばかりではありません。
むしろ利益になるという場合もあり得るでしょう。
しかし,どれほど働いても一定の時間数しか働いたことにならないという制度ですから,場合によっては,残業代などの割増賃金支払いを拒むための手段として用いられてしまうおそれがあります。
というよりも,現実問題として,割増賃金支払いの逃れのための口実として利用されていることは少なくありません。
そのため,企画業務型裁量労働制を含むみなし労働時間制の適用については,限定的に考えなければなりません。
しかも,企画・立案等の業務というのは,使用者の主観によって左右され,恣意的に適用範囲が拡大されやすく,専門業務型の場合よりも制度の濫用のおそれが大きいといえます。
そこで,企画業務型裁量労働制の要件は,専門業務型裁量労働制よりもさらに厳格なものとなっています。具体的には,以下の要件が必要とされています。
- 事業の運営に関する事項についての企画,立案,調査及び分析の業務であつて,当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため,当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務(対象業務)であること
- 対象業務を適切に遂行するための知識,経験等を有する労働者(対象労働者)であること
- 対象労働者が企画業務型裁量労働制が適用されることに個別合意していること
- 労働基準法38条の4第2項各号の要件を満たす「賃金,労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し,事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(労使委員会)」が設置されていること
- 労使委員会の委員の5分の4以上の多数により労働基準法38条の4第1項各号に掲げる事項に関する決議がなされたこと
- 労使委員会の決議を管轄の労働基準監督署長に届け出たこと
- 企画業務型裁量労働制を採用する旨を就業規則または労働協約で定めたこと
これらの要件を満たすのは,使用者にとって極めてハードルが高いといえます。
そのため,実際には,企画業種型裁量労働制を導入するのは難しく,導入している形を取っている場合も,実際には要件を満たしておらず無効,ということが少なくないのです。
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