専門業務型裁量労働制の対象業務とは?
専門業務裁量労働制が適用されるのは,労働基準法等によって定められている対象業務に限られます。ここでは,専門職裁量労働制が適用される対象業務について,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。
専門業務型裁量労働制の対象業務とは?
(著者:弁護士 志賀 貴 )
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専門業務型裁量労働制の対象業務
労働基準法 第38条の2 第1項
使用者が,当該事業場に,労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合,労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により,次に掲げる事項を定めた場合において,労働者を第一号に掲げる業務に就かせたときは,当該労働者は,厚生労働省令で定めるところにより,第二号に掲げる時間労働したものとみなす。
① 業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため,当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務のうち,労働者に就かせることとする業務(以下この条において「対象業務」という。)
② 対象業務に従事する労働者の労働時間として算定される時間
③ 対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し,当該対象業務に従事する労働者に対し使用者が具体的な指示をしないこと。
④ 対象業務に従事する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること。
⑤ 対象業務に従事する労働者からの苦情の処理に関する措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること。
⑥ 前各号に掲げるもののほか,厚生労働省令で定める事項
みなし労働時間制の1つに「裁量労働みなし労働時間制」がありますが,さらに,この裁量労働みなし労働時間制の1つとして,「専門業務型裁量労働制」があります。
専門業務型裁量労働制とは,業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため,当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものについて,その労働者の労働時間を,あらかじめ労使協定によって定められた労働時間であるとみなすという制度です。
裁量労働制は,労働者が実際に働いた労働時間に関わらず,あらかじめ労使協定で定められた労働時間働いたものとみなしてしまうという制度であるため,残業代の支払い等を回避するための潜脱手段として濫用されるおそれが小さくありません。
そこで,専門業務型裁量労働制の対象となる業務(対象業務)は,労働基準法等によって定められている一定の業務に限定されています。具体的には,以下の要件を満たす業務が,専門業務型裁量労働制の対象業務とされます(労働基準法38条の2第1項第1号)。
- 業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があること
- 当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものであること
- 厚生労働省令で定める業務であること
厚生労働省令で定める業務
前記のとおり,専門業務型裁量労働制の対象業務となる業務は,「厚生労働省令で定める業務」でなければなりません。
したがって,対象業務に該当するのかどうかについては,まずはこの「厚生労働省令で定める業務」であるかどうかを確認する必要があります。
厚生労働省令で定める対象業種
労働基準法施行規則 24条の2の2 第2項
法第38条の3第1項第1号の厚生労働省令で定める業務は,次のとおりとする。
① 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
② 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であつてプログラムの設計の基本となるものをいう。)の分析又は設計の業務
③ 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法 (昭和25年法律第132号)第2条第27号に規定する放送番組(以下「放送番組」という。)の制作のための取材若しくは編集の業務
④ 衣服,室内装飾,工業製品,広告等の新たなデザインの考案の業務
⑤ 放送番組,映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
⑥ 前各号のほか,厚生労働大臣の指定する業務
「厚生労働省令で定める業務」にいう厚生労働省令とは「労働基準法施行規則」のことです。専門業務型裁量労働制における「厚生労働省令で定める業務」は,労働基準法施行規則24条の2の2第2項において列挙されています。
厚生労働省令(労働基準施行規則)で定める対象業務は,以下のとおりです。
- 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務(研究開発)
- 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であつてプログラムの設計の基本となるものをいう。)の分析又は設計の業務(システムエンジニア)
- 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法第2条第27号に規定する放送番組の制作のための取材若しくは編集の業務(記者・編集者)
- 衣服,室内装飾,工業製品,広告等の新たなデザインの考案の業務(デザイナー)
- 放送番組,映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
- 前各号のほか,厚生労働大臣の指定する業務
厚生労働大臣の指定する対象業種
労働基準法施行規則24条の2の2第2項第6号によれば,同1号から5号までの業務のほかに,「厚生労働大臣の指定する業務」も専門業務型裁量労働制の対象業務になることを規定しています。
現在,この「厚生労働大臣の指定する業務」として,以下の14種の業務が指定されています(平成6年1月4日基発1号,平成9年2月14日基発93号,平成9年3月25日基発195号,平成11年3月31日基発168号,平成14年2月13日基発0213002号など)。
- 広告,宣伝等における商品等の内容,特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライター業務)
- 事業運営において情報処理システム(労働基準法施行規則24条の2の2第2項2号に規定する情報処理システムをいう。)を活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタント業務)
- 建築物内における照明器具,家具等の配置に関する考案,表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーター業務)
- ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
- 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析,評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリスト業務)
- 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
- 学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)
- 公認会計士の業務
- 弁護士の業務
- 建築士(一級建築士,二級建築士及び木造建築士)の業務
- 不動産鑑定士の業務
- 弁理士の業務
- 税理士の業務
- 中小企業診断士の業務
まとめ
前記「厚生労働省令で定める業務」および「厚生労働大臣の指定する業務」をまとめると,現在では,以下の19種の業務が対象業務とされているということになります。
- 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務(研究開発)
- 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であつてプログラムの設計の基本となるものをいう。)の分析又は設計の業務(システムエンジニア)
- 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法第2条第27号に規定する放送番組の制作のための取材若しくは編集の業務(記者・編集者)
- 衣服,室内装飾,工業製品,広告等の新たなデザインの考案の業務(デザイナー)
- 放送番組,映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
- 広告,宣伝等における商品等の内容,特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライター業務)
- 事業運営において情報処理システム(労働基準法施行規則24条の2の2第2項2号に規定する情報処理システムをいう。)を活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタント業務)
- 建築物内における照明器具,家具等の配置に関する考案,表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーター業務)
- ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
- 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析,評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリスト業務)
- 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
- 学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)
- 公認会計士の業務
- 弁護士の業務
- 建築士(一級建築士,二級建築士及び木造建築士)の業務
- 不動産鑑定士の業務
- 弁理士の業務
- 税理士の業務
- 中小企業診断士の業務
厚生労働省令で定める業務
前記のとおり,専門業務型裁量労働制の対象業務となる業務は,現在,19種類の業務があります。
それぞれの対象業務の内容は,以下のとおりです。
研究開発業務
「新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務」は,専門業務型裁量労働制の対象業務とされています(労働基準法施行規則24条の2の2第2項1号)。
ここでいう「新商品若しくは新技術の研究開発」とは,材料,製品,生産・製造工程等の開発または技術的改善等のことをいいます。
システムエンジニア業務
「情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であつてプログラムの設計の基本となるものをいう。)の分析又は設計の業務」は,専門業務型裁量労働制の対象業務とされています(労働基準法施行規則24条の2の2第2項2号)。
ここでいう「情報処理システム」とは,情報の整理,加工,蓄積,検索等の処理を目的として,コンピュータのハードウェア,ソフトウェア,通信ネットワーク,データを処理するプログラム等が構成要素として組み合わされた体系をいいます。
そして,「情報処理システムの分析又は設計の業務」とは,①ニーズの把握、ユーザーの業務分析等に基づいた最適な業務処理方法の決定及びその方法に適合する機種の選定,②入出力設計,処理手順の設計等アプリケーション・システムの設計,機械構成の細部の決定,ソフトウェアの決定等,③システム稼働後のシステムの評価,問題点の発見,その解決のための改善等の業務をいいます。
そのため,単にプログラムの設計または作成だけを行うプログラマーは,この対象業務に含まれません。
記者・編集者業務
「新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法第2条第27号に規定する放送番組の制作のための取材若しくは編集の業務」は,専門業務型裁量労働制の対象業務とされています(労働基準法施行規則24条の2の2第2項3号)。
「新聞又は出版の事業」には,新聞,定期刊行物にニュースを提供するニュース供給業も含まれます。
なお,新聞または出版の事業以外の事業で記事の取材または編集の業務に従事する者,例えば社内報の編集者等は含まれません。
「取材又は編集の業務」とは,記事の内容に関する企画および立案,記事の取材,原稿の作成,割付け・レイアウト・内容のチェック等の業務をいうとされています。
記事の取材に当たって,記者に同行するカメラマンの業務や,単なる校正の業務は含まれません。
「放送番組」とは,放送関係法で定める放送のことです。一般放送を目的としない社内教育用放送や学校での教育用放送は含まれないと解されています。
「放送番組の制作のための取材の業務」とは,報道番組,ドキュメンタリー等の制作のために行われる取材,インタビュー等の業務をいうとされています。取材に同行するカメラマンや技術スタッフは含まれません。
「放送番組の制作のための編集の業務」とは,上記の取材を要する番組における取材対象の選定等の企画及び取材によって得られたものを番組に構成するための内容的な編集をいうとされています。
音量調整,フィルムの作成等技術的編集は含まれません。
デザイナー業務
「衣服,室内装飾,工業製品,広告等の新たなデザインの考案の業務」は,専門業務型裁量労働制の対象業務とされています(労働基準法施行規則24条の2の2第2項4号)。
ここでいう「広告」には,商品のパッケージ,ディスプレイ等広く宣伝を目的としたものも含まれます。ただし,考案されたデザインに基づき,単に図面の作成,製品の制作等の業務を行う者は含まれません。
プロデューサー・ディレクター業務
「放送番組,映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務」は,専門業務型裁量労働制の対象業務とされています(労働基準法施行規則24条の2の2第2項5号)。
ここでいう「放送番組,映画等の制作」には,ビデオ,レコード,音楽テープ等の制作および演劇,コンサート,ショー等の興行等が含まれます。
「プロデューサーの業務」とは,制作全般について責任を持ち,企画の決定,対外折衝,スタッフの選定,予算の管理等を総括して行うことをいい,「ディレクターの業務」とは,スタッフを統率し,指揮し,現場の制作作業の統括を行うことをいうとされています。
コピーライター業務
「広告,宣伝等における商品等の内容,特長等に係る文章の案の考案の業務」は,厚生労働大臣の指定により,専門業務型裁量労働制の対象業務とされています(労働基準法施行規則24条の2の2第2項6号)。
いわゆる「コピーライターの業務」です。
ここでいう「広告,宣伝等」には,商品等の内容,特長等に係る文章伝達の媒体一般が含まれるものであり,また,営利目的か否かを問わず,啓蒙,啓発のための文章も含まれます。
「商品等」とは,単に商行為たる売買の目的物たる物品にとどまるものではなく,動産であるか不動産であるか,また,有体物であるか無体物であるかを問われません。
「内容,特長等」には,キャッチフレーズ(おおむね10文字前後で読み手を引きつける魅力的な言葉),ボディコピー(より詳しい商品内容等の説明),スローガン(企業の考え方や姿勢を分かりやすく表現したもの)等が含まれます。
「文章」については,その長短を問わないとされています。
システムコンサルタント業務
「事業運営において情報処理システム(労働基準法施行規則24条の2の2第2項2号に規定する情報処理システムをいう。)を活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務」は,厚生労働大臣の指定により,専門業務型裁量労働制の対象業務とされています(労働基準法施行規則24条の2の2第2項6号)。
いわゆる「システムコンサルタントの」業務です。
「情報処理システムを活用するための問題点の把握」とは,現行の情報処理システムまたは業務遂行体制についてヒアリング等を行い,新しい情報処理システムの導入または現行情報処理システムの改善に関し,情報処理システムを効率的,有効に活用するための方法について問題点の把握を行うことをいいます。
「それを活用するための方法に関する考案若しくは助言」とは,情報処理システムの開発に必要な時間,費用等を考慮した上で,新しい情報処理システムの導入や現行の情報処理システムの改善に関しシステムを効率的,有効に活用するための方法を考案し,助言(専ら時間配分を顧客の都合に合わせざるを得ない相談業務は含まない。)することをいいます。
なお,アプリケーションの設計または開発の業務,データベース設計または構築の業務は,システムコンサルタント業務には含まれません。ただし,労働基準法施行規則24条の2の2第2号の対象業務には含まれます。
インテリアコーディネーター業務
「建築物内における照明器具,家具等の配置に関する考案,表現又は助言の業務」は,厚生労働大臣の指定により,専門業務型裁量労働制の対象業務とされています(労働基準法施行規則24条の2の2第2項6号)。
いわゆる「インテリアコーディーネーター」の業務です。
ここでいう「照明器具,家具等」には,照明器具,家具の他,建具,建装品(ブラインド,びょうぶ,額縁等),じゅうたん,カーテン等繊維製品等が含まれます。
「配置に関する考案,表現又は助言の業務」とは,顧客の要望を踏まえたインテリアをイメージし,照明器具,家具等の選定又はその具体的な配置を考案した上で,顧客に対してインテリアに関する助言を行う業務,提案書を作成する業務,模型を作製する業務又は家具等の配置の際の立ち会いの業務のことをいいます。
内装等の施工など建設業務,専ら図面や提案書等の清書を行う業務,専ら模型の作製等を行う業務,家具販売店等における一定の時間帯を設定して行う相談業務は含まれません。
ゲーム用ソフトウェアの創作業務
「ゲーム用ソフトウェアの創作の業務」は,厚生労働大臣の指定により,専門業務型裁量労働制の対象業務とされています(労働基準法施行規則24条の2の2第2項6号)。
ここでいう「ゲーム用ソフトウェア」には,家庭用テレビゲーム用ソフトウェア,液晶表示装置を使用した携帯ゲーム用ソフトウェア,ゲームセンター等に設置される業務用テレビゲーム用ソフトウェア,パーソナルコンピュータゲーム用ソフトウェア等が含まれます。
「創作」には,シナリオ作成(全体構想),映像制作,音響制作等が含まれます。
なお,専ら他人の具体的指示に基づく裁量権のないプログラミング等を行う者または創作されたソフトウェアに基づき単にCD-ROM等の製品の製造を行う者は含まれません。
証券アナリスト業務
「有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析,評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務」は,厚生労働大臣の指定により,専門業務型裁量労働制の対象業務とされています(労働基準法施行規則24条の2の2第2項6号)。
いわゆる「証券アナリスト」の業務です。
ここでいう「有価証券市場における相場等の動向」とは,株式相場,債券相場の動向のほかこれに影響を与える経済等の動向をいいます。
「有価証券の価値等」とは,有価証券に投資することによって将来得られる利益である値上がり益,利子,配当等の経済的価値及び有価証券の価値の基盤となる企業の事業活動をいいます。
「分析,評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務」とは,有価証券等に関する高度の専門知識と分析技術を応用して分析し,当該分析の結果を踏まえて評価を行い,これら自らの分析又は評価結果に基づいて運用担当者等に対し有価証券の投資に関する助言を行う業務をいうとされています。
ポートフォリオを構築又は管理する業務,一定の時間を設定して行う相談業務,専ら分析のためのデータの入力・整理を行う業務は含まれません。
金融商品の開発業務
「金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務」は,厚生労働大臣の指定により,専門業務型裁量労働制の対象業務とされています(労働基準法施行規則24条の2の2第2項6号)。
「金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発」とは,金融取引のリスクを減らしてより効率的に利益を得るため,金融工学のほか,統計学,数学,経済学等の知識をもって確率モデル等の作成,更新を行い,これによるシミュレーションの実施,その結果の検証等の技法を駆使した新たな金融商品の開発をいうとされています。
また,「金融商品」とは,金融派生商品(金や原油などの原資産,株式や債権などの原証券の変化に依存してその値が変化する証券)および同様の手法を用いた預貯金等をいいます。
金融サービスの企画立案または構築の業務,金融商品の売買の業務,市場動向分析の業務,資産運用の業務,保険商品又は共済の開発に際してアクチュアリーが通常行う業務,商品名の変更のみをもって行う金融商品の開発の業務,専らデータの入力・整理を行う業務は含まれません。
大学における教授研究業務
「学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)」は,厚生労働大臣の指定により,専門業務型裁量労働制の対象業務とされています(労働基準法施行規則24条の2の2第2項6号)。
当該業務は,学校教育法に規定する大学の教授,助教授又は講師の業務のことです。
「教授研究」とは,学校教育法に規定する大学の教授,助教授又は講師が,学生を教授し,その研究を指導し,研究に従事することをいいます。
患者との関係のために,一定の時間帯を設定して行う診療の業務は含まれません。
「主として研究に従事する」とは,業務の中心はあくまで研究の業務であることをいうものであり,具体的には,講義等の授業や,入試事務等の教育関連業務の時間が,多くとも,1週の所定労働時間又は法定労働時間のうち短いものについて,そのおおむね5割に満たない程度であることをいうとされています。
なお,患者との関係のために,一定の時間帯を設定して行う診療の業務は教授研究の業務に含まれないことから,当該業務を行う大学の教授,助教授又は講師は専門業務型裁量労働制の対象とならないとされています。
公認会計士の業務
「公認会計士の業務」は,厚生労働大臣の指定により,専門業務型裁量労働制の対象業務とされています(労働基準法施行規則24条の2の2第2項6号)。
ここでいう「公認会計士の業務」とは,法令に基づいて公認会計土の業務とされている業務をいいます。
例えば,公認会計士法第2条第1項に規定する「他人の求めに応じて報酬を得て,財務書類の監査又は証明をする」業務,同条第2項に規定する「公認会計士の名称を用いて,他人の求めに応じ報酬を得て,財務書類の調整をし,財務に関する調査若しくは立案をし,又は財務に関する相談に応じる」業務がこれに該当します。
弁護士の業務
「弁護士の業務」は,厚生労働大臣の指定により,専門業務型裁量労働制の対象業務とされています(労働基準法施行規則24条の2の2第2項6号)。
「弁護士の業務」とは,法令に基づいて弁護士の業務とされている業務です。
例えば,弁護士法第3条第1項に規定する「当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によって,訴訟事件,非訴訟事件及び審査請求,異議申立て,再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他の法律事務」が,これに該当するとされています。
建築士の業務
「建築士(一級建築士,二級建築士及び木造建築士)の業務」は,厚生労働大臣の指定により,専門業務型裁量労働制の対象業務とされています(労働基準法施行規則24条の2の2第2項6号)。
「建築士の業務」とは,法令に基づいて建築士の業務とされている業務です。例えば,建築士法第3条から第3条の3までに規定する設計又は工事監理がこれに該当するとされています。
他方,例えば,他の「建築士」の指示に基づいて専ら製図を行うなど補助的業務を行う者は含まれません。
不動産鑑定士の業務
「不動産鑑定士の業務」は,厚生労働大臣の指定により,専門業務型裁量労働制の対象業務とされています(労働基準法施行規則24条の2の2第2項6号)。
「不動産鑑定士の業務」とは,法令に基づいて不動産鑑定士の業務とされている業務です。
例えば,不動産の鑑定評価に関する法律第2条第1項に規定する「土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利の経済価値を判定し,その結果を価格に表示する」業務が,これに該当するとされています。
弁理士の業務
「弁理士の業務」は,厚生労働大臣の指定により,専門業務型裁量労働制の対象業務とされています(労働基準法施行規則24条の2の2第2項6号)。
「弁理士の業務」とは,法令に基づいて弁理士の業務とされている業務です。
例えば,弁理士法第4条第1項に規定する「特許,実用新案,意匠若しくは商標又は国際出願若しくは国際登録出願に関する特許庁における手続及び特許,実用新案,意匠又は商標に関する異議申立て又は裁定に関する経済産業大臣に対する手続についての代理並びにこれらの手続に係る事項に関する鑑定その他の事務」が,これに該当するとされています。
税理士の業務
「税理士の業務」は,厚生労働大臣の指定により,専門業務型裁量労働制の対象業務とされています(労働基準法施行規則24条の2の2第2項6号)。
「税理士の業務」とは,法令に基づいて弁理士の業務とされている業務です。
「税理士の業務」とは,法令に基づいて税理士の業務とされている業務です。例えば,税理士法第2条第1項に規定する税務代理又は税務書類の作成がこれに該当するとされています。
中小企業診断士の業務
「中小企業診断士の業務」は,厚生労働大臣の指定により,専門業務型裁量労働制の対象業務とされています(労働基準法施行規則24条の2の2第2項6号)。
「中小企業診断士の業務」とは,法令に規定されている中小企業の経営の診断又は助言の業務です。
例えば,中小企業支援事業の実施に関する基準を定める省令第4条第3項に規定する一般診断業務(中小企業者に対して個別に行う診断若しくは助言又はその手段に対して行う診断若しくは助言)等がこれに該当するとされています。
もっとも,中小企業診断士の資格を有する者であっても,専ら中小企業診断士の業務以外の業務を行う者は含まれません。
対象業務該当性の判断
前記厚生労働省令等によって限定列挙された対象業務に形式的に該当するとしても,それだけでは,専門業務型裁量労働制の対象業務であるとはいえません。
専門業務型裁量労働制の対象業務といえるか否かは,単に名目だけで判断されるものではなく,「業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要がある」ことが客観的に認められるものでなければならないと解されています。
また,労働者の行う業務が対象業務であったとしても,実際の業務が対象業務に付随する業務にすぎない場合や,対象業務を補助する業務にすぎない場合には,業務上の裁量がないため,専門業務型裁量労働制は適用されません。
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