管理監督者に関する昭和63年3月14日基発第150号とは?
残業代を支払わなくてよい管理監督者であるかどうかの判断基準として,昭和63年3月14日基発第150号の通達があります。
ここでは,この管理監督者に関する昭和63年3月14日基発第150号について,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。
管理監督者に関する昭和63年3月14日基発第150号とは?
(著者:弁護士 志賀 貴 )
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管理監督者性の判断基準
労働基準法41条2号は,管理監督者の立場にある労働者に対しては,労働時間・休日・休憩に関する規制が適用されず,時間外労働に対する割増賃金(残業代)や休日労働に対する割増賃金(休日手当)を支払わなくてもよいと規定しています。
そのため,労働者の方による未払い残業代等請求においては,この管理監督者性が争われることが少なくありません。
そこで問題となるのは,当該労働者の方が本当に上記労基法41条2号の管理監督者に該当しているのかどうかという点です。
実は,この管理監督者性の判断基準については,まだ最高裁判所の裁判例がないため,完全に確立した判断基準がないというのが現状です。
もっとも,管理監督者性の判断基準については,行政通達や下級審裁判例においていくつかの基準が設けられており,実務的には,これらの通達や下級審裁判例を参考として,ある程度の判断基準が定まってきているといってよいでしょう。
その参考となる通達の1つに,厚生労働省労働基準局昭和63年3月14日第150号通達があります。
管理監督者に関する昭和63年3月14日基発第150号
前記のとおり,管理監督者性を判断するために参考となる基準の1つとして,厚生労働省労働基準局昭和63年3月14日第150号通達があります。
厚生労働省労働基準局による通達(昭和63年3月14日基発第150号)によれば,「法第41条第2号に定める『監督若しくは管理の地位にある者』とは,一般的には,部長,工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり,名称にとらわれず,実態に即して判断すべきものである。」とされています。
この通達は,この後に発せられた管理監督者の判断に関する通達の根本的な基準となっているばかりか,裁判においても,上記通達の見解が参考として重視されています。
>> 管理監督者性の判断基準
昭和63年3月14日基発第150号の意味
この昭和63年3月14日基発第150号には,2つのポイントがあります。
経営者との一体性・労働条件における優遇措置
まず第一に,管理監督者とは,「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」であるとしている点です。
無論,管理監督者といえども労働者であって,経営者ではありませんから,経営者とすべての面について同等の権限をもっていなければ管理監督者とはいえないとまでは言っていません(それではもはや経営者そのものです。)。
しかし,少なくとも,労働条件の決定などの労務管理の面においては,経営者に匹敵するような権限を持っていることが,管理監督者性を判断するための要素となっているということを示しています。
例えば,他の従業員の採用や解雇を決定できたり,採用時の賃金や昇給・減給などを決定できたり,あるいは,出勤日などを決定できたりするような権限があるということです。
ちなみに,この通達によれば,管理監督者性は,労務管理の分野における経営者との一体性が判断の基準となるということを示していますので,労務管理以外のその他の分野(経理や営業等)における経営者との一体性は,管理監督者性の判断においては重要視されないということを示しているといえるでしょう。
なお,この判断の枠組みは,昭和63年3月14日基発第150号以降に通達された,厚生労働省労働基準局による通達(平成20年9月9日基発第0909001号)においても維持されています。
>> 厚生労働省労働基準局による通達(平成20年9月9日基発第0909001号)
実質的判断の必要性
もう1つのポイントは,管理監督者性の問題は,「名称にとらわれず,実態に即して判断すべきものである」という点です。
要するに,例えば,会社において管理者とか,監督者とか,あるいは課長,部長,工場長などという名称や役職が与えられていたとしても,それだけで管理監督者となるわけではないということです。
管理監督者といえるかどうかは,現実の雇用の状況等をみて,真に管理監督者というに値するのかどうかを考慮して判断しなければならないということです。
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