未払い残業代の内容証明郵便による請求書の書き方
時間外労働に対する残業代・残業手当が支払われなかった場合,まずは残業代・残業手当の支払いの請求書を内容証明郵便で送付するのが一般的です。
ここでは,未払い残業代・残業手当の請求書の書き方について,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。
未払い残業代の内容証明郵便による請求書の書き方
(著者:弁護士 志賀 貴 )
※東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所における未払い残業代等請求のお取り扱いについては,未払い残業代等請求の経験豊富な弁護士をお探しの方へをご覧ください。
未払い残業代の請求書を送付する意義
時間外労働をした場合,労働者は使用者に対して割増賃金(残業代)の支払いを求めることができます。この未払いの残業代・残業手当を請求する場合,まずは,第1段階として,請求書を送付することになります。
残業代などの賃金の請求権は,3年で時効により消滅します。つまり,所定の支払い日の翌日から3年が経過すると,消滅時効によって,もはやその残業代等を請求できなくなってしまうということです。
消滅時効を止めるためには,消滅時効の更新をしなければなりません。
消滅時効の更新の方法として最も代表的な方法は,訴訟を提起することです。訴訟を提起すれば,残業代等の賃金の消滅時効を止めることができます。
しかし,訴訟を提起するためには準備が必要です。消滅時効を更新させるためとはいえ,いきなり訴訟を提起することはできません。
そこで,催告という制度があります。
催告は,時効更新事由ではありませんが,催告をすると仮に消滅時効の進行が止まり,催告後6カ月以内に訴訟提起等をすれば,催告時に時効更新があったものとして扱われることになります。
その催告の方法としては,使用者に対して請求書を送付するという方法が用いられるのが一般的です。
未払い残業代等の請求書を送付するということは,単に使用者との交渉前に請求の意思を明らかにしておくというだけの意味しかないわけではなく,上記のとおり,消滅時効を仮に止めておくという重要な意味があるのです。
未払い残業代の請求の内容証明郵便
前記の未払いの残業代・残業手当の請求書は,配達証明付きの内容証明郵便によって送付するのが一般的です。
内容証明郵便とは,その記載内容について,郵便局が確認した上で,郵便局がその内容の記載があるものを郵便によって送付したことを証明してくれるという郵便の方法のことをいいます。
この内容証明郵便を使えば,特定の内容で未払いの残業代を請求したということを,後々まで証拠として用いることが出来るということになります。
後日,請求書をそうしたかどうか(法的にいえば催告をしたかどうか)が争われるような事態になった場合に,内容証明郵便として請求書を送付しておけば,郵便局でその内容を証明してくれるので,催告をしたという証拠として用いることができるようになるということです。
また,配達証明を付けることによって,その内容証明郵便を,確かに使用者側に配達したということまで証明できるようになります。
配達証明を付けておけば,使用者側に請求書が送付されたという事実の証拠として用いることができるようになります。つまり,請求書など受取っていないという反論を打破することができるというわけです。
そのため,内容証明に配達証明を付けて送付するのが一般的なやり方となります。
この内容証明と配達証明を用いることによって,請求書が使用者側に確かに配達されたこととその請求書の内容を証拠として残すことができるのです。
なお,内容証明郵便は,文字数や行数,使用できる文字や記号などが厳格に定められており,これに反する場合には受け付けてもらえません。あらかじめ,内容証明郵便の制限について確認しておく必要があります。
未払い残業代の請求のための内容証明の記載事項
請求書の書き方については,特に定められた書き方というものはありません。しかし,出来れば,後々に紛争となった場合に備えて,あらかじめ,裁判でも主張が必要とされる事実を記載しておくべきでしょう。
前記のとおり,請求書を送る意義は消滅時効の更新のための催告をするというところにあります。したがって,具体的にどのような請求権を催告しているのかということは,特に特定しておかなければなりません。
また,未払い残業代を請求する裁判においては,残業代計算の基礎となる賃金の金額や時間外労働をしたことなどを証明しなければなりません。
そこで,内容証明郵便による請求書にも,残業代の基礎となる賃金の金額に加え,時間外労働(残業時間)をしたことを記載しておくべきでしょう。
ただし,時間外労働をしたことと言っても,裁判の場合と違い,1日1日の残業時間を請求書に書くというのはなかなか大変です。通常は,合計で何時間残業をしたかを記載することになるでしょう。
その上で,請求する未払い残業代の金額を明示しておきます。
もちろん,残業代を計算するためにはタイムカードなどの資料が必要になってきますが,それが手元に無いという場合もあるかと思います。
その場合には,やむを得ないので,少なくとも請求権を特定するため,「●●年●●月●●日から●●年●●月●●日までの未払い残業代を請求します。」などの記載をしておいた方がよいでしょう。
「入社から本日までの未払い残業代全額を請求します。」などの記載でも特定として足りると解されています。
なお,通常は,期限を定めて支払いを請求することになります。
したがって,「何年何月何日までに,○○銀行○○支店 ○○預金 口座番号○○ 口座名義人○○ に振り込む方法によってお支払いください。」と記載します。
未払い残業代の請求のための内容証明の記載例
未払い残業代の内容証明郵便の記載例は以下のようになります(もっとも,もちろん別の書き方でもかまいません。)。
拝啓
私は,○○年○○月○○日,貴社に入社し,○○年○○月○○日に退社した者です(退社していない場合には,「現在も貴社に勤務している者です。」と記載すれば足りるでしょう。)。
私は,○○年○○月○○日から○○年○○月○○日までの間,貴社に対し,合計で○○時間の時間外労働を提供したにもかかわらず,いまだ時間外労働に対する割増賃金○○円(金額を算定できない場合には,「○○年○○月分から○○年○○月分までの時間外労働に対する割増賃金」と記載します。)の支払いを受けておりません。
そこで,私は,貴社に対し,時間外労働に対する割増賃金○○円(○○年○○月分から○○年○○月分までの時間外労働に対する割増賃金)の支払いを請求いたします。
つきましては,上記未払いの割増賃金○○円及びこれに対する○○年○○月○○日(未払いが始まった給料日)から支払済みまで年3パーセントの割合による遅延損害金を,○○年○○月○○日までに(通常は1週間から3週間程度の期間を定めます。),○○銀行○○支店 ○○預金(普通・定期などの別) 口座番号○○ 口座名義人○○ (支払いを希望する口座を記載します。)に振り込む方法によってお支払いください。
仮に,上記期日までにお支払いをいただけない場合には,労働基準監督署への申告,民事裁判の提起または刑事告訴等の法的手段をとることになりますので,あらかじめご了承ください。
草々
すでに退職している場合には,上記の第4段落目を以下のように変更してみてください。
つきましては,○○円(未払いの残業代と退職日までの年3パーセントの遅延損害金の合計額。)及びうち○○円(未払い残業代の額)に対する退職日の翌日である○○年○○月○○日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による遅延損害金を,○○年○○月○○日までに(通常は1週間から3週間程度の期間を定めます。),○○銀行○○支店 ○○預金(普通・定期などの別) 口座番号○○ 口座名義人○○ (支払いを希望する口座を記載します。)に振り込む方法によってお支払いください。
また,タイムカード等の資料の開示も一緒に求める場合には,「本件紛争の早期解決のために,雇用契約書,就業規則,タイムカードなど関連資料の開示を併せて請求いたします。」などの記載を追加してもよいでしょう。
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