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法令解説【裁判員制度】

裁判員制度を合憲とした最大判平成23年11月16日

裁判員制度については,それが日本国憲法に違反していないかということが争われることがあります。

この裁判員制度・裁判員裁判が合憲であるとした最高裁判所大法廷判決のリーディングケースとして,最高裁判所大法廷平成23年11月16日判決があります。

このページの以下では,この最高裁判所大法廷平成23年11月16日判決について,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所がご説明いたします。

なお,個人の方の生活や中小企業の方の事業に関わる法令については,生活・事業に関わる法令紹介ページを,裁判員制度の概要については,裁判員制度とは何か?をご覧ください。

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最大判平成23年11月16日

平成23年11月16日,最高裁判所の大法廷で,裁判員裁判は合憲であるとした判決がなされました(最大判平成23年11月16日)。

「合憲」とは,日本国憲法に違反していないということです。つまり,上記の判決の事件は,裁判員裁判という法制度が,憲法に違反していないか(違憲ではないか)が争われていたのです。

この大法廷とは,最高裁判所長官も含めた最高裁判所の構成員である全裁判官が担当するというもので,言ってみれば,日本の制度上,最も権威のある司法判断をする裁判体です。

裁判員裁判については,賛否両論といってよいでしょう。法律業界以外の人からだけでなく,我々法律業界でも,裁判員裁判に対する評価は一律ではありません。

この判決の事件は,覚せい剤取締法違反等の事件だったようですが,上記最高裁判例においては,事件の具体的な事実関係等については判断しておらず,もっぱら裁判員裁判の合憲性についてのみ判断しています。

>> 裁判員制度とは?

国民の司法参加の合憲性

第1の争点として,国民が裁判員として刑事司法に参加することは,憲法に違反しないかという点が問題となっています。

つまり,憲法は専門的知識を有した職業裁判官によって刑事司法を行うことが予定されているのだから,一般国民を刑事司法に参加させることは憲法の予定していないことではないのか,という問題意識です。

この点につき大法廷は,確かに,刑事被告人の権利等に関する憲法の規定や裁判所や裁判官の独立に関する憲法の規定からすれば,憲法は職業裁判官による刑事裁判を予定しているとしつつも,民主主義の発展に伴い国民の司法参加が世界的に発展してきている歴史的事実,日本でもかつて陪審制が採られていたこと,日本国憲法制定にいたる経緯などの事情からすれば,憲法は国民の司法参加を排除する趣旨ではないとした上で,国民の司法参加は一般的に禁止されていないから,それを採用するかは,憲法の諸原則に反しない限り,立法政策の問題であると判示しました。

つまり,日本国憲法は国民の司法参加を禁止していないのであるから,国民の司法参加の問題は,他の憲法の規定に反しない限り,国会が決めることだと判断したのです。

憲法31条,32条,37条1項,76条1項,80条1項違反の有無

次に,裁判員制度の定めは,憲法の各個別の規定に違反しないのかが問題となってきます。

それに関し,まず第2の争点として,裁判員制度が,憲法31条,32条,37条1項,76条1項,80条1項の各規定に違反しないかという点が問題とされています。

日本国憲法 第31条
何人も,法律の定める手続によらなければ,その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

同第32条
何人も,裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

同第37条
第1項 すべて刑事事件においては,被告人は,公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

同第76条
第1項 すべて司法権は,最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

同第80条
下級裁判所の裁判官は,最高裁判所の指名した者の名簿によつて,内閣でこれを任命する。その裁判官は,任期を10年とし,再任されることができる。但し,法律の定める年齢に達した時には退官する。

問題の所在

80条1項は下級裁判所の「裁判官」と規定しています。そのため,下級裁判所は「裁判官」のみで構成されていなければならないのではないかという問題が生じます。

仮に,下級裁判所は裁判官のみで構成されていなければならないとすると,76条1項により,司法権は下級裁判所に属するのですから,下級裁判所における司法権の行使,つまり,刑事裁判における事実認定・法令適用・量刑判断などは全部裁判官が行わなければならないということになります。

裁判員裁判は下級裁判所である地方裁判所によって行われますから,事実認定等を裁判官でない裁判員が参加して行う裁判員制度は76条1項に違反するということにもなります。

また,32条は「裁判所」における裁判を受ける権利を保障し,37条は公平な「裁判所」による裁判を受ける権利を保障しているところ,仮にこの「裁判所」が裁判官によって構成された下級裁判所ということを意味するならば,裁判員による裁判は,32条や37条にも違反することになるでしょう。

加えて,そのように考えると,裁判員制度は違憲であり適正な手続ではないので「法律の定める手続」とはいえないから,裁判員制度によって刑罰を科するようなことは31条にも違反するということになります。

最高裁の判断

しかし,大法廷は,以下のような判断をしました。

まず80条1項の点ですが,下級裁判所については国民の司法参加を禁じている趣旨ではないから,裁判官と国民とで構成される裁判体がただちに80条1項の裁判所に当たらないとはいえないとして,同項の裁判所に当たるかどうかは,やはり他の規定も含めた憲法の趣旨に沿うものかどうかによって判断すべきだと判示しました。

その上で,上記判例は,裁判員制度の各規定を挙げつつ,他の憲法の規定に反するかどうかを検討しています。

ここでは,個々の条項にどのように違反していないのかということは具体的には述べられていないのですが,結論として,身分保障のある裁判官が裁判体の構成員であること,事実認定・法令の適用・量刑の意見を述べて評決に参加することには必ずしも法律的知識や経験が必要不可欠とはいえないこと,裁判官である裁判長によって裁判員が適切な職務執行できるように配慮していること,裁判官との協議によって良識ある結論に達することが十分に期待できること,刑事手続上の被告人の権利や諸原則については裁判官が判断することができるので保障されていることなどからすれば,公平な裁判所によって適正な手続が行われることは制度的に保障され,裁判官が刑事裁判の主体的な担い手であることに変わりなく,憲法の諸原則も確保されるから,31条,32条,37条1項,76条1項,80条1項には違反しないと判示しました。

憲法76条3項違反の有無

第3の争点として,裁判員制度は憲法76条3項に違反しないかという点も問題とされました。

日本国憲法 第76条
第3項 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

上記規定は,裁判官の独立を保障したものです。

問題の所在は,裁判員制度の場合,裁判員の意見や評決によって裁判官の判断が左右されることになりますから,憲法と法律以外には拘束されることのない裁判官が裁判員の意見や評決に拘束されることになってしまい,76条3項に違反しないかという点です。

この点について大法廷は,裁判員法は憲法に適合する法律であるから憲法と法律にのみ拘束されるとする76条3項に違反しないとし,裁判員制度下でも裁判官が裁判の基本的な担い手であり,公平中立な裁判が図られているから76条3項の趣旨に反することもなりと判示しました。

また,裁判員裁判だと,裁判官のみで裁判をした場合と結論が異なってしまうのは憲法に反するという批判に対しても,そのように考えると国民の司法参加の意味がなくなってしまうことや被告人の権利保障にも配慮されていることなどからすれば,その批判も当たらないとしています。

憲法76条2項違反の有無

第4の争点として,憲法76条2項違反も争われました。

日本国憲法 第76条
第2項 特別裁判所は,これを設置することができない。行政機関は,終審として裁判を行ふことができない。

特別裁判所とは,通常の裁判所の系統に入らない裁判機関のことです。例えば,戦前の軍法会議などがこれに当たるとされます。

この点について大法廷は,裁判員制度の裁判体は地方裁判所に属すること,控訴・上告が認められていることから,特別裁判所には当たらないと判示しました。

憲法18条違反の有無

第5の争点は,憲法18条に違反しないかどうかという点です。

日本国憲法 第18条
何人も,いかなる奴隷的拘束も受けない。又,犯罪に因る処罰の場合を除いては,その意に反する苦役に服させられない。

憲法18条は,懲役刑など犯罪による処罰の場合以外には苦役に服させられない権利を保障しています。

そこで,裁判員に選任された人が,裁判員として裁判に出頭しなければならないのは苦役に当たり,憲法18条に違反しないかという点が問題となります。

この点について大法廷は,司法の国民的基盤の強化という裁判員制度の趣旨からすれば,裁判員として出頭することはむしろ参政権と同様の権限を国民に与えるものであって,苦役とはいえないこと,裁判員を辞退できる場合も定められていること,旅費や日当など経済的負担を軽減する措置も講じられていることなどから,裁判員制度は憲法18条後段に違反しないと判示しました。

まとめ

以上のように,大法廷は,裁判員制度は憲法のどの規定にも違反しないという判断をしました。

そして,その上で,裁判員制度について,以下のとおり,裁判員制度はこれから成熟していく制度であるということを論じています。

裁判員制度は,裁判員が個別の事件ごとに国民の中から無作為に選任され,裁判官のような身分を有しないという点においては,陪審制に類似するが,他方,裁判官と共に事実認定,法令の適用及び量刑判断を行うという点においては,参審制とも共通するところが少なくなく,我が国独特の国民の司法参加の制度であるということができる。それだけに,この制度が陪審制や参審制の利点を生かし,優れた制度として社会に定着するためには,その運営に関与する全ての者による不断の努力が求められるものといえよう。裁判員制度が導入されるまで,我が国の刑事裁判は,裁判官を始めとする法曹のみによって担われ,詳細な事実認定などを特徴とする高度に専門化した運用が行われてきた。司法の役割を実現するために,法に関する専門性が必須であることは既に述べたとおりであるが,法曹のみによって実現される高度の専門性は,時に国民の理解を困難にし,その感覚から乖離したものにもなりかねない側面を持つ。刑事裁判のように,国民の日常生活と密接に関連し,国民の理解と支持が不可欠とされる領域においては,この点に対する配慮は特に重要である。裁判員制度は,司法の国民的基盤の強化を目的とするものであるが,それは,国民の視点や感覚と法曹の専門性とが常に交流することによって,相互の理解を深め,それぞれの長所が生かされるような刑事裁判の実現を目指すものということができる。その目的を十全に達成するには相当の期間を必要とすることはいうまでもないが,その過程もまた,国民に根ざした司法を実現する上で,大きな意義を有するものと思われる。このような長期的な視点に立った努力の積み重ねによって,我が国の実情に最も適した国民の司法参加の制度を実現していくことができるものと考えられる。

当時としては,まだ裁判員制度が発足したばかりであることもあって,合憲性を判定するのは時期尚早であるという考えだったといえます。ただし,今後は,また別の判断がなされる可能性がないとはいえないでしょう。

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