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ファイル共有ソフトによる著作権侵害

ファイル共有ソフトによる著作権侵害の損害賠償の金額はいくらになるか?

ファイル共有ソフトを利用して著作物であるマンガ,アニメ,アダルト動画などをインターネット上にアップロードするなどの著作権侵害行為があった場合には,著作者は,侵害者であるユーザーに対して損害賠償を請求できます。

著作権侵害によって賠償すべき損害には,消極損害(逸失利益),積極損害,精神的損害があります。

このページの以下では,ファイル共有ソフトによる著作権侵害の損害賠償の金額はいくらになるのかについてご説明いたします。

なお,ファイル共有ソフトによる著作権侵害についてご相談は無料です。ご相談をご希望の方は,弁護士によるファイル共有ソフト著作権侵害の無料相談をご覧ください。

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著作権侵害によって発生する損害

ファイル共有ソフトの利用により著作権の侵害が生じた場合,著作者は,著作権侵害をしたユーザーに対し,不法行為責任を追求し,被った損害の賠償を請求することができます(民法709条以下)。

著作者が著作権侵害者に対して賠償を請求できる損害としては,以下のものが考えられます。

  • 消極損害(逸失利益):ファイル共有ソフトによる著作権侵害がなければ著作者が得ることができたであろう利益
  • 積極損害:著作権侵害の調査実費や裁判のための弁護士費用など,著作権侵害によって失った利益
  • 精神的損害(慰謝料)

もちろん,これらの全額が裁判によって認められるとは限りません。どの程度の損害が認定されるかは,事案によって異なります。

BitTorrent(ビットトレント)ユーザーの著作権侵害を認めた裁判例として,知財高裁令和4年4月20日判決(原審:東京地方裁判所令和3年8月27日)があります。

この判決では,逸失利益の損害賠償請求権のみ認められています。また,個々のユーザーが負う損害賠償金額は,1万~9万円ほどと認定されています。

ただし,本判決は債務不存在確認の事案であり,そもそも著作者側から積極損害や慰謝料等の請求がされていないため,逸失利益のみしか認められていない点には注意が必要です。

この知財高裁令和4年4月20日判決は,ファイル共有ソフトのユーザーに対する損害賠償について判断の基準を示しているため,以下ではこの判決の基準に従って説明します。

>> ファイル共有ソフトによる著作権侵害の損害賠償請求とは?

損害賠償責任を負う時期的範囲

不法行為または共同不法行為に基づく損害賠償請求権が認められるためには,著作権侵害行為と損害との間に相当因果関係が存在している必要があります。

したがって,著作権侵害行為があったとしても,著作者が被った損害のすべてについて侵害者に責任が生じるわけではなく,侵害者が賠償責任を負う損害は,侵害行為と相当因果関係にある損害に限られます。

前掲裁判例では,ユーザーが責任を負う範囲は,BitTorrent(ビットトレント)の利用を開始して著作物ファイルをアップロード可能な状態にした時からクライアントソフトを削除するなどしてファイルの送受信ができなくなった時までの間に限られるとしています。

この時期的範囲の基準は,ビットトレント以外のファイル共有ソフトの場合でも,同様に考えることができるでしょう。

>> 知財高裁令和4年4月20日判決の解説

消極損害(逸失利益)

ファイル共有ソフトによる著作権侵害における損害として主要なものは,消極損害(逸失利益)です。

逸失利益とは,ファイル共有ソフトによる著作権侵害がなければ,著作者が得られていたであろう利益を損害とするものです。

知財高判令和4年4月20日の算定基準

前掲知財高判令和4年4月20日では,BitTorrent(ビットトレント)ユーザーが賠償責任を負う逸失利益の金額について,以下の算定方法を用いています。

【逸失利益の額 = 著作物の販売価格 × 販売価格に対する著作者の売上の割合(利益率)× 著作物ファイルのダウンロード数】

今後,ビットトレント以外のファイル共有ソフトによる著作権侵害においても,上記基準がスタンダードになる可能性があります。

算定の基礎とすべき著作物の販売価格

逸失利益額算定の基礎となるのは,当該著作物の価値です。それが一般に販売されているものであれば,販売価格が算定の基礎となります。

ただし,販売価格は,販売方法によって異なることもあります。

前掲裁判例では,著作者が著作物をダウンロード・ストリーミング形式で販売していたことから,DVD等の製品版の価格ではなく,ダウンロード・ストリーミング形式での販売価格を算定の基礎販売価格としています。

販売価格に対する著作者の売上(利益率)

上記算定の基礎となる販売価格の全額が,逸失利益の算定基礎となるわけではありません。

損害となるべき利益はあくまで著作者が得られたであろう利益ですから,販売のための経費支出等を控除した利益の部分のみが損害となります。

そのため,販売価格に,それ対する著作者の利益率を乗じて,著作者が得られたであろう利益を算出する必要があります。

なお,前掲裁判例では,著作者の利益率は38パーセントと認定されています。

著作物ファイルのダウンロード数

ファイル共有ソフトによって著作権侵害行為(著作物のアップロード)がされると,他のユーザーは,無料でその著作物を視聴・ダウンロードすることができるようになります。

つまり,著作権侵害行為によって,ダウンロード1回ごとに,著作者はその著作物を販売する機会を1回失うことになります。著作物がダウンロードされた回数に応じて,損害も増えていくということです。

そこで,逸失利益は,前記販売価格等に著作物ファイルがダウンロードされた回数を乗じて算定することになります。当然,ダウンロード回数が多ければ多いほど,損害賠償額も大きくなっていきます。

他の算定方法

上記知財高判令和4年4月20日の算定方法が絶対のものというわけではなく,他の算定方法も考えられるところです。

例えば,ファイル共有ソフトユーザーの場合には少ないでしょうが,著作権侵害行為によって侵害者が利益を得ていた場合には,その利益の額が損害額として認定されることもあり得ます(著作権法114条2項)。

積極損害(調査費用や弁護士費用など)

ファイル共有ソフトによる著作権侵害における損害としては,消極損害(逸失利益)のほかに,積極損害も考えられます。積極損害とは,著作権侵害行為によって失われた利益を損害とするものです。

積極損害の場合も,著作権侵害行為と相当因果関係にあるもののみが賠償すべき損害として認められます。

例えば,著作権侵害行為等の調査のために支出した実費,発信者情報開示請求訴訟や損害賠償請求訴訟において弁護士に依頼した場合の弁護士費用,遅延損害金などがあります。

弁護士費用は,その全額が認められるわけではなく,判決での損害賠償認容額の10パーセント程度にとどめられるのが通常です。

遅延損害金は,不法行為(著作権侵害行為)の時から発生し,損害賠償額に対する年3パーセントの割合の金額(令和4年8月15日現在。利率は今後変動する可能性があります。)となります。

精神的損害(慰謝料)

ファイル共有ソフトによる著作権侵害の場合でも,例は多くないでしょうが,精神的損害の賠償請求,つまり慰謝料の請求が認められないわけではありません。

著作権侵害行為が著作者の社会的評価に悪影響を及ぼす場合や著作者の人格権を侵害するような場合には,慰謝料の請求が認められることはあり得るでしょう。

共同不法行為による連帯責任

ファイル共有ソフトによる著作権侵害の場合,個々のユーザーごとにみると著作物ファイル全部をアップロードしているわけではないものの,他のユーザーのアップロード行為と相まって,完全な著作物の取得を可能にし,著作権を侵害することになるという場合があります。

このような場合,著作権侵害をしたユーザーは,他のユーザーと共同して著作権を侵害したものとして,共同不法行為責任(民法719条1項)を負うことがあります。

前掲裁判例でも,原告であるユーザーらは,BitTorrent(ビットトレント)を利用して著作物ファイルをアップロードした他の原告らまたは氏名不詳者らと共同して,ビットトレントのユーザーに動画ファイルをダウンロードさせることで被告である著作者に損害を生じさせたということができるから,原告であるユーザーらが動画ファイルを送信可能化したことについて,同時期に同一の動画ファイルを送信可能化していた他の原告らまたは氏名不詳者らと連帯して,被告の損害を賠償する責任を負うとして,共同不法行為が成立することを認めています。

共同不法行為が成立する場合,損害賠償について,同時期に同一の著作物ファイルを送信可能化していた他のユーザーと連帯責任を負うことになります。

連帯責任ですので,著作者は,共同不法行為者の誰に対しても,損害額の全額を請求でき,これに対し,共同不法行為者は,割合で請求するように求めることはできません。

ただし,あくまで1人に対して全額を請求できるというだけで,損害額自体が高額になるというわけではありません。

損害賠償と示談の違い

損害賠償とは,あくまで著作者の被った損害を填補するものです。言い方を変えると「被害弁償」に過ぎません。示談は,被害弁償にとどまらず,問題を解決するための話し合いです。

損害賠償は民事の問題ですが,示談は,どちらかと言えば刑事の問題といえます。

例えば,ファイル共有ソフトによる著作権侵害の場合であれば,被害弁償だけでなく,刑事告訴をどうするか,すでに立件されている場合には,告訴の取下げや宥恕(加害者を許し処罰を求めない意思の表明)をどうするか,今後著作権侵害をしない旨の誓約をするかなどを話し合うのが示談ということになります。

すでに立件されている場合には,被害弁償にとどまらず示談までできているかどうかが,起訴猶予になるか,または量刑が軽減されるかにおいてかなり重要となってきます。

>> ファイル共有ソフトによる著作権侵害の法的責任追求の流れ

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