限定承認をするにはどのような要件が必要か?
限定承認を利用するためには,相続放棄とは異なるいくつかの要件を満たしている必要があります。ここでは,限定承認の要件についてご説明いたします。
限定承認をするにはどのような要件が必要か?
(著者:弁護士 志賀 貴 )
東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所における限定承認の法律相談については,弁護士による限定承認の法律相談のご案内をご覧ください。
限定承認の要件
限定承認とは,「相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して」相続を承認することをいいます。
限定承認は,相続財産があることは判明しているが,相続債務がどのくらいあるのか分からないため,相続放棄すべきか単純承認すべきか判断ができないような場合などに利用することになります。
もっとも,限定承認は,実際にはほとんど利用されていないのが現状です。その理由は,利用のための要件を満たすことが難しい場合が多く,また,手続が煩雑であるという点にあります。
この限定承認を利用するための要件には,手続的な要件と実体的な要件があります。
>> 限定承認とは?
限定承認の申述
限定承認は,相続放棄と同じく,ただ単に限定承認をするという意思を表示すればよいというものではありません。
限定承認をするためには,法律で定められた一定の手続を履践しなければなりません。つまり,限定承認は要式行為なのです。
具体的には,以下の手続を履践する必要があります。
- 相続開始を知った時から3か月(熟慮期間)内に
- 相続財産目録を作成して
- 家庭裁判所に対して限定承認の申述をすること
限定承認も,相続放棄同様,相続開始を知った時から3か月内,いわゆる熟慮期間内に家庭裁判所への申述を行わなければなりません(民法915条1項)。
ただし,事情があれば,事前に家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申述して,熟慮期間を延長してもらえる場合があります。
また,家庭裁判所に対して限定承認の申述をする際には,相続財産の目録を作成してこれを提出する必要があります(民法924条)。
申述については,口頭ではなく,限定承認の申述書を作成し,これを提出する方法によって行う必要があります(家事事件手続法201条5項)。
共同相続人全員による申述
限定承認は,前記要件だけでなく,さらに,相続放棄と異なり,共同相続人がいる場合には,その共同相続人全員で申述をしなければならないという要件があります。
相続放棄であれば,仮に他の共同相続人が単純承認をしたり,または法定単純承認事由が生じていたりしても,単独で相続放棄の申述をすることが可能です。
ところが,限定承認の場合には,他の共同相続人全員と共同で申述をする必要があります。
そのため,もし他の共同相続人の1人でも,単純承認したり法定単純承認となってしまった場合には,もはや誰も限定承認できなくなってしまうのです。
したがって,限定承認をするには,共同相続人全員の足並みがそろっていることが必須となってきます。限定承認が利用されにくい理由の1つもここにあると言われています。
なお,共同相続人全員で限定承認を申述し,それが家庭裁判所に受理された後,共同相続人の1人が相続財産隠匿などの背信行為をした場合には,その相続人について法定単純承認が成立し(民法921条3号),他の相続人には限定承認の効力が認められますが,背信行為をした相続人は単純承認をしたものとみなされ,単純承認者としての責任を負担することになります。
共同相続人の1人が相続財産を処分して法定単純承認(民法921条1号)が成立していたことを知らずに共同相続人全員で限定承認を申述して受理された後に,その相続財産処分をしていたことが判明した場合にも,上記と同様,他の相続人には限定承認の効力が認められますが,相続財産処分行為をした相続人は単純承認をしたものとみなされ,単純承認者としての責任を負担することになります。
ただし,共同相続人の1人が相続放棄をしたとしても,他の共同相続人全員で限定承認を申述することができます。相続放棄をした共同相続人は,はじめから共同相続人ではなかったものとして扱われるからです。
相続の限定承認に関連する記事
- 弁護士による相続の限定承認の法律相談
- 限定承認の弁護士報酬・費用
- 相続の放棄・承認(目次)
- 相続の承認とは?
- 相続の単純承認とは?
- 法定単純承認とは?
- 相続財産を処分すると相続放棄・限定承認できなくなるのか?
- 相続放棄・限定承認はいつまでにすればよいのか?(熟慮期間)
- 背信行為をすると相続放棄・限定承認できなくなるのか?
- 限定承認とは?
- 限定承認のメリット・デメリットとは?
- 限定承認の手続はどのような流れで進むのか?
- 相続放棄とは?
このサイトがお役に立ちましたらシェアお願いいたします。
限定承認のことならLSC綜合法律事務所まで
限定承認の申述で弁護士をお探しなら,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所にお任せください。法律相談・ご依頼をご希望の方は【 042-512-8890 】からご予約ください。
※なお,お電話・メール等によるご相談・ご依頼は承っておりません。当事務所にご来訪いただいてのご相談・ご依頼となります。あらかじめご了承ください。
LSC綜合法律事務所
所在地:〒190-0022 東京都立川市錦町2丁目3-3 オリンピック錦町ビル2階
ご予約のお電話:042-512-8890
代表弁護士 志賀 貴
日本弁護士連合会:登録番号35945(旧60期)
所属会:第一東京弁護士本部および多摩支部
>> 日弁連会員検索ページから確認できます。
アクセス
最寄駅:JR立川駅(南口)・多摩都市モノレール立川南駅から徒歩5~7分
駐車場:近隣にコインパーキングがあります。
※ 詳しい道案内は,下記各ページをご覧ください。