遺言の法的効力が認められる事項(遺言事項)とは?
遺言書に記載することによって遺言としての法的効力が認められる事項のことを「遺言事項(法定遺言事項)」といいます。遺言事項は,民法その他の法律に規定されています。遺言事項でない事柄を遺言書に記載しても法的効果は生じません。
ここでは,この遺言の法的効力が認められる事項(遺言事項)とは何かについて,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。
遺言の法的効力が認められる事項(遺言事項)とは?
(著者:弁護士 志賀 貴 )
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遺言の法的効力が認められる事項(遺言事項)
遺言をするには書面(遺言書)を作成しなければなりませんが,遺言書に記載をしておけば,どのような事柄でも法的な拘束力が発生するというわけではありません。
遺言書に記載することによって,遺言としての法的効力が生ずる事項は,民法などの法律によって限定されています。この遺言としての法的効力を生ずる事項のことを「遺言事項(法定遺言事項)」といいます。
また,上記のとおり,遺言事項は民法その他の法律で定められていますが,このことを「遺言事項法定主義」といいます。
遺言は,遺言者の一方的な意思表示によって法的効果を生じますが,相続開始後になると,その遺言者の真意を確認することはできなくなります。
それにもかかわらず,あまりに無限定に遺言事項を認めてしまうと,権利関係があいまいになってしまい,相続人や利害関係人に迷惑をかけ,場合によっては紛争が多発してしまうおそれがあります。
そこで,遺言の明確性を確保して後日の紛争の拡大を予防するために,あえて法は,遺言事項法定主義を採用し,遺言事項を限定しているのです。
遺言事項の種類
遺言事項には,大きく分けると,財産に関する事項・身分関係に関する事項・遺言執行に関する事項があります。
財産に関する遺言事項
財産に関する遺言事項としては以下のようなものがあります。
- 祭祀主催者の指定(民法897条1項ただし書)
- 相続分の指定・指定の委託(民法902条)
- 特別受益の持戻しの免除(民法903条3項)
- 遺産分割方法の指定・指定の委託(民法908条)
- 5年を超えない期間での遺産分割の禁止(民法908条)
- 相続人相互間の担保責任の指定(民法914条)
- 遺贈(民法964条)
- 遺留分侵害額負担割合の指定(民法1047条1項2号)
- 一般財団法人の設立・財産の拠出(一般法人法152条2項等)
- 生命保険受取人の変更(保険法44条1項)
- 信託の設定(信託法3条2号)
- 「相続させる」旨の遺言(解釈)
身分関係に関する遺言事項
身分関係に関する遺言事項としては以下のようなものがあります。
- 遺言認知(民法781条2項)
- 未成年後見人の指定・未成年後見監督人の指定(民法839条1項等)
- 推定相続人の遺言廃除・取消し(民法893条等)
遺言の執行に関する遺言事項
遺言執行に関する遺言事項としては以下のようなものがあります。
- 遺言執行者の指定・指定の委託(民法1006条1項)
遺言事項に当たらない事項を記載する意味
前記のような法定遺言事項に当たるものでなければ,仮に遺言書に記載をしたとしても,遺言としての法的効力は生じないことになります。
その意味では,そのような事項を記載をしても,法的には無意味ということにはなります。
もっとも,法的には無意味というだけであって,遺言事項でないことを遺言書に記載しておいてはいけないということではありません。
また,遺言事項でない記載であっても,事実上は何らかの効果・影響を生ずるということはあるでしょう。
よくあるものとしては,いわゆる「付言」と呼ばれる記載です。
たとえば,遺言によって法定相続分よりも少ない取り分しか得られなくなった相続人に対して,少なくした理由や思いなどを遺言に記載して,遺産相続紛争をしないようにお願いするなどの付言を記載しておくことことは,実務上一般的です。
また,自分が死んだらこの寺院で供養して欲しい,この墓に入れて欲しい,こういう風に埋葬して欲しい,というような要望を記載することもあります。
これら法定遺言事項ではない記載は,もちろん法的効力はありません。しかし,これらの記載を読んだ相続人に思いを伝えることによって,実際にその記載のとおりに相続人の方たちが行動してくれるということは,もちろんあるでしょう。
したがって,遺言事項でない事項を記載することには,まったく意味がないというものではないのです。むしろ,上記のような記載をすることは一般的でしょう。
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