民事訴訟手続の流れ
裁判手続のうちで最も代表的な手続は,やはり「訴訟」手続でしょう。個人生活や企業に関わる裁判紛争においても,訴訟手続は少なくありません。
ここでは,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所が,民事訴訟手続の流れについてご説明いたします。
民事訴訟手続の流れ
(著者:弁護士 志賀 貴 )
民事訴訟の原則
私人間における法律関係は,公権力と市民の関係と異なり,基本的には当事者間で自由に定めることができます。これを「私的自治の原則」といいます。
民事訴訟は,この私人間における権利義務関係を取り扱う裁判手続です。そのため,民事訴訟においても,私的自治の原則を尊重すべきであると考えられています。
すなわち,民事訴訟においては,裁判所は,基本的に当事者間に不公平が生じないように中立の立場から指揮・監督する立場であって,訴訟を主導していくのはあくまで当事者であるという考え方をとっているということです。
具体的には,重要な民事訴訟の原則として,処分権主義と弁論主義という民事訴訟の原則が設けられています。
処分権主義とは,民事訴訟をどのように開始し,どの範囲で審理をしてもらい,どのように終了させるかについて,当事者の意思に委ねるという原則です。したがって,当事者が訴えていない事項を裁判所が取り上げて訴訟にしたり,当事者が主張していない事項を審理したり,当事者が求めていない判断をするようなことはないということになります。
また,弁論主義とは,民事訴訟における主張や証拠による立証は,当事者がしなければならないという原則のことをいいます。したがって,裁判所は,当事者が主張していないことを前提に判断することはできませんし,主張の立証についても,当事者が立証していない事実を認定することはできないということになります。
つまり,民事訴訟においては,当事者がどのようなことを裁判所に判断してもらいたいのかを決定して訴えを提起し,それを裁判所に認めてもらえるように,自ら主張と立証をしなければならないのが原則である,ということです。
民事訴訟手続の流れ
民事訴訟の手続は,以下のように進んでいくことになります。

訴えの提起
前記のとおり,民事訴訟においては処分権主義がとられていますので,訴訟を開始するかどうかも当事者(原告)意思に委ねられています。
つまり,訴訟を開始するために,原告となるべき当事者が,訴えを提起する必要があります。
訴えを提起するには,「訴状」を管轄の裁判所に提出する必要があります。裁判所に訴状が受理されると,訴えを提起したものとして扱われることになります。
この訴え提起に際しては,所定の裁判所に対する手数料(収入印紙で納付)や郵券も一緒に提出する必要があります。
なお,訴状に不備があれば,裁判所から補正が命じられます。この補正に応じない場合には,訴えが却下されることがあります。

第1回口頭弁論期日の指定及び呼び出し
適法に訴えが提起されると,裁判所によって第1回の口頭弁論期日が指定されます。
通常は,前もって,原告となるべき当事者に対して,担当裁判所書記官から期日の調整の連絡があります。日程が調整されると,その日に口頭弁論期日が指定され,指定の場所(法廷)への呼び出しがなされます。
他方,被告に対して,訴状の副本が特別送達という特殊な郵便によって送達され,訴えが提起されたことが連絡されることになります。同時に,第1回口頭弁論期日に出頭するように呼出状も送達されます。
特別送達が被告に到達した時点で,訴訟が適法に係属することになります。被告が住所地に所在していないなどの理由により被告に到達されない場合,公示送達等の手続をとらなければならない場合もあります。

答弁書の提出
被告は,訴状が送達され第1回口頭弁論期日の指定を受けた場合,訴状に対して答弁をする必要があります。被告の答弁は,答弁書という書面を提出する方法によって行われます。
答弁書では,最低でも,原告の請求を認める(請求の認諾)か認めないのかを主張する必要があります。

第1回口頭弁論期日
第1回口頭弁論期日では,原告による訴状の陳述が行われ,他方,被告の答弁書の陳述が行われます。
被告が欠席し,しかも,答弁書を提出しない場合には,争う意思がないものとして,原告の請求どおりの判決が第1回になされる場合もあります。
したがって,被告となる場合で請求を争うならば,最低でも,原告の訴状における請求の趣旨についての答弁を述べる答弁書を提出しておく必要があるでしょう。
なお,訴訟においては,擬制陳述という制度が設けられています。要するに,書面を提出しておけば,当事者が出頭していなくても,その書面に記載された事項を法定において主張したものとみなして,出席扱いとするという制度です。
地方裁判所の第一審では,第1回期日に限り,この擬制陳述が認められますので,被告は,第1回については,答弁書を提出しておけば出頭する必要はないということになります。

第1回口頭弁論期日以降の審理
第1回の口頭弁論期日以降は,第2回,第3回と期日が進んでいくことになります。また,複雑な事件であれば,当事者の主張や証拠を整理するために,弁論準備手続というものが行われることもあります。
この期日間では,当事者が,それぞれ主張やその自己の主張を裏付ける証拠を提出して立証をしていくことになります。
主張については,基本的に,書面を提出していきます。この主張を記載した書面のことを準備書面といいます。
当事者は,それぞれ準備書面を提出して主張をしていくことになります。また,随時,証拠も提出することになります。
また,裁判所は,各当事者が提出した主張やそれを裏付ける証拠を整理して,各当事者に釈明を求める場合もあります。

証拠調べ
裁判所は,各当事者が提出した証拠を,証拠調べという手続によって確認・調査していきます。
裁判所は,まず,書面による証拠(書証)を取り調べていきます。そして,書証では立証しきれていない事実を確認し,争点の整理を行います。
当事者は,書証では立証できない事実について,それぞれ人証の申し出をします。人証とは,つまり,当事者本人や証人です。人証の申出が認められると,その当事者本人や証人についての尋問手続が行われます。
通常,当事者尋問や証人尋問は,訴訟の最後に行われます。

結審・判決
各当事者の主張と立証が尽くされると,裁判所は審理を終了させます。これを結審と呼ぶことがあります。
結審後,裁判所は,各当事者の主張と立証に基づいて,判決を言い渡します。結審の後,別途,判決言い渡し期日を設けて判決を言い渡すのが通常です。

不服申立て又は第一審判決の確定
当事者は,判決に対して不服申立てをすることができます。第一審が簡易裁判所であった場合,地方裁判所に対して控訴することができます。
第一審が地方裁判所であった場合には,高等裁判所に控訴することになります。
第一審の判決書が当事者に送達されてから2週間を経過しても,それに対する不服申立てがなされなかった場合には,その第一審判決は確定します。
つまり,もはやその判決に不服を申し立てることができなくなるということです。
また,第一審が簡易裁判所で控訴審が地方裁判所であった場合には,高等裁判所に対して上告することができます。第一審が地方裁判所で控訴審が高等裁判所であった場合には,最高裁判所に上告することができます。

控訴審
第一審判決に対して当事者が不服申立て(控訴)をした場合,訴訟手続は,第二審(控訴審)に引き継がれることになります。
第一審が簡易裁判所であれば,控訴審は地方裁判所であり,第一審が地方裁判所であれば,控訴審は高等裁判所になります。
控訴審は,第一審の訴訟の続きとして扱われます。したがって,控訴審においても,事実の主張と立証をすることになり,それに基づいて控訴審の裁判所が判決をすることになります。
ただし,第一審と同じ主張や立証をしたとしても,控訴審ではほとんど審理されることはなく,第一審と同じ判決がなされるのが通常です。
そのような主張や立証をした場合には,控訴審の第1回期日で審理が終結するのが普通です。
第一審と異なる主張や立証がなされた場合や第一審の審理に疑義があると控訴審の裁判所が判断した場合には,再度,証拠調べ等が行われる場合があります。

上告審
控訴審判決に対して当事者が不服申立てをした場合,訴訟手続は,第三審(上告審)に引き継がれることになります。
第一審が簡易裁判所で控訴審が地方裁判所であれば,上告審は高等裁判所です。第一審が地方裁判所で控訴審が高等裁判所であれば,上告審は最高裁判所ということになります。
上告審は,第一審や控訴審と異なり,法律審と呼ばれます。つまり,事実の主張や立証は,原則としてできません。
控訴審までに提出された事実の主張や立証に基づき,あくまで法的な評価や判断のみをするのがこの上告審の役割です。
上告審において判決が言い渡されると,その判決は確定することになります。
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